Research

研究専門分野
 プラズモニクス,近接場光学

研究テーマ:光と電子のエネルギー強結合科学に基づく革新的なイメージング・センシングデバイスの創生


準表面プラズモン共鳴(Quasi-SPR):プラズモニクスの拡張概念


従来の表面プラズモン共鳴とは異なる新しい光共鳴状態である「準表面プラズモン共鳴」の学理を構築しました.一般に表面プラズモン共鳴は光の波長や入射角度に厳しい制約を受けますが,本研究では共鳴条件からわずかに外すという柔軟な設計により,広い入射角度範囲にわたって効率的な光回折現象である「プラズモニック回折」が生じることを示しました.この現象をシリコンイメージセンサに応用することで,これまで感度が低いとされてきた近赤外光に対する吸収効率が大幅に向上することが解析的に示されました.スマートフォンのカメラや自動運転に用いられる距離センサ,医療・バイオ分野のイメージング技術など,幅広い光センシング技術の高性能化が期待されます.

Phys. Rev. Lett. 136, 036902 (2026)
Nanophotonics 14, 25 (2025)
IEEE J. Electron Devices Soc. 13, 278 (2025)
ACS Appl. Electron. Mater. 6, 7046 (2024)
Opt. Express 30, 35516 (2022)
Opt. Express 29, 21313 (2021)


シリコンプラズモニクス:半導体プラズモニクスを開拓


表面プラズモン共鳴の励起には金属材料を用い,光電場と金属中の自由電子との共鳴結合条件を満たすように設計することがこれまでの常識でしたが,本研究ではシリコンの深紫外域における直接遷移吸収に基づいて生成される高密度の励起電子により,表面プラズモン共鳴が励起されることを明らかにしました.さらに,この共鳴により増幅された励起電子が光電流に直接寄与することを突き止め,シリコンセンサの感度が大幅に向上することを世界で初めて実証しました.本研究成果は,高感度深紫外センサの実現にとどまらず,従来のプラズモニクスの枠組みを半導体にまで拡張する物理的意義のある成果です.本研究は,静岡大学電子工学研究所 川田研究室,居波研究室との共同研究テーマです.

Phys. Rev. Lett. 134, 226901 (2025)


アクティブプラズモニクス:金属で色を操る


表面プラズモン共鳴波長の動的制御技術に関する研究に取り組んでいます.特に,金属ナノ構造体の透過光色を時間的に変調できる「動的カラーチューニング」技術を開発しました.伸縮性フィルム上に作製した銀ナノキューブ単層集積膜において,透過光色が赤色から橙色,黄色へと連続的に変化することを世界で初めて明らかにしています.この派生技術として,金ナノ粒子からなる多様な発色を示す「プラズモニックカラーフィルム」も開発しました.

ACS Appl. Opt. Mater. 2, 284 (2024)
ACS Omega 8, 41579 (2023)
ACS Appl. Nano Mater. 4, 9721 (2021)
Appl. Surf. Sci. 480, 846 (2019)


深紫外プラズモニクス:自家蛍光増強


深紫外光は殺菌,燃焼検知,半導体計測などに有用な波長域であり,生体が深紫外光照射により自家蛍光を発することでもよく知られています.この自家蛍光は可視域での色素染色による蛍光イメージングにおいては背景ノイズ成分となるため,これまでは如何に自家蛍光を抑制するかという観点で研究が進められてきました.しかし,深紫外光励起に伴う自家蛍光は分子の共鳴吸収に起因するものであり,非染色のまま細胞の重要分子であるNADHなどを可視化できる可能性を有しています.本研究では,アルミニウム金属を用いることにより,深紫外光励起に伴う蛍光が大幅に増強されることを明らかにし,細胞の自家蛍光を利用した非染色細胞の高感度観察に成功しました.さらに,深紫外光の高いエネルギーを利用して,表面プラズモン共鳴による光電子放出増大効果も実証しました.本研究は,静岡大学電子工学研究所 川田研究室,居波研究室との共同研究テーマです.

Opt. Mater. Express 14, 1149 (2024)
Photonics 9, 1 (2022)
Opt. Mater. Express 11, 2278 (2021)
Anal. Chem. 88, 1407 (2016)
Appl. Phys. Lett. 104, 223703 (2014)
Opt. Express 21, 17447 (2013)


プラズモニックカラーフィルタリング:金属薄膜での任意波長透過フィルタ


2002年にThomas Ebbesenらは,金属微小開口の周囲に同心円状の周期凹凸構造を形成することにより,特定波長の光が微小開口からビーム状に透過する現象を見出しました.本研究では,この原理をシリコンイメージセンサのカラーフィルタへ応用することを考案し,可視・近赤外プラズモニックカラーフィルタを開発しました.従来のイメージセンサでは,有機色素または顔料吸収に基づくRGBカラーフィルタが用いられてきましたが,これらのカラーフィルタは近赤外域において二次透過を示すため,可視光と近赤外光を同一センサ上で選択的にフィルタリングすることは困難でした.本研究では,周期制御により,可視域から近赤外域にかけてマルチカラーな透過特性が得られることを実証しました.これにより,カラー画像に加えて,近赤外イメージングによる距離画像の同時取得など,次世代イメージセンサの開発が期待されます.

Sensors 19, 1750 (2019)
Opt. Express 26, 25178 (2018)


表面プラズモン共鳴伝搬による超解像イメージング:金属ナノレンズ


光の波動性に起因する空間分解能の制限である「回折限界」を超えた解像度を有するイメージングデバイスとして,金属ナノワイヤをアレイ状に配列した構造からなる「金属ナノレンズ」を世界で初めて提案しました.金属ナノワイヤ固有のキャビティ共振に基づく表面プラズモン共鳴により,ワイヤアレイの一端における二次元光強度分布が,もう一端へと忠実に再現されます.表面プラズモン共鳴を利用すると,光の場がワイヤ径程度まで強く閉じ込められるため,数十ナノメートル径の金属ナノワイヤを用いることにより超解像性が得られます.

Nat. Photonics 2, 438 (2008)
Phys. Rev. Lett. 95, 267407 (2005)


研究推進にあたっての主な助成金

令和7年度科学研究費補助金 基盤研究(B)「準表面プラズモン共鳴によるシリコンイメージセンサの近赤外感度向上基盤技術の確立」2025年度〜
令和4年度科学研究費補助金 基盤研究(B)「偏光・波面制御システムによる超微細金属ホログラフィックパターニング技術の創成」2022年度~2024年度
令和4年度科学研究費補助金 挑戦的研究(萌芽)「超広角透過型プラズモンによる高感度近赤外シリコンイメージセンサの開発」2022年度~2023年度
国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)Beyond 5G研究開発促進事業 シーズ創出型プログラム「空間並列チャネル伝送に向けた垂直入射型ナノハイブリッド光変調器・受信器の研究開発」2021年度〜2023年度
科学技術振興機構 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP 産学共同(本格型))「小型レーザーモジュールによるタッチパネル用次世代センサフィルム製造装置の開発」2020年度〜2022年度
平成31年度科学研究費補助金 挑戦的研究(萌芽)「光-電子結合系超解像イメージングデバイスの開発」2019年度~2020年度
平成31年度科学研究費補助金 基盤研究(B)「偏光場を活用したレーザー光還元法による超微細金属ナノ構造作製技術の開発」2019年度~2021年度
科学技術振興機構 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP 機能検証フェーズタイプ) 「レーザー照射金属パターニングによる超高精細・大型透明電極の開発」2018年度〜2020年度
平成28年度科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)3次元半導体検出器で切り拓く新たな量子イメージングの展開「ワイドレンジプラズモンフィルタ実装SOIPIXセンサによる可視近赤外イメージング」2016年度~2017年度
平成26年度科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)3次元半導体検出器で切り拓く新たな量子イメージングの展開「ワイドレンジプラズモンフィルタを実装したSOI量子イメージセンサの開発」2014年度~2015年度
平成24年度科学研究費補助金 基盤研究(C)「モノリシック集積型高感度SOIフォトダイオードの開発」2012年度~2014年度
平成21年度科学研究費補助金 若手研究(B)「自己組織化法による金属ナノレンズの作製」2009年度~2010年度
平成19年度科学研究費補助金 若手研究(B)「金属レンズ共鳴プラズモンを利用したナノ分解能イメージング」2007年度~2008年度