アークの原理を理解するのに必要な知識(中学生まで+α)
ここでは、環天頂アーク、環水平アークの発生原理を説明するときに用いる用語と知識の説明をします。
・雲の正体と種類
私たちが空を見上げると、雲は白く形のあるように見えます。しかしながら、雲は一つの大きな塊ではなく、水滴(小さな水の粒)や氷晶(小さな氷の粒)が集まったものです。粒が集まったものを遠くから見ることで、私たちが見る雲になります。雲は存在する高度や粒の種類によって「上層雲」、「中層雲」、「下層雲」の3つに分類されます。
・上層雲とは?
上層雲は地上から約5km~13kmの高度に存在し、氷晶が集まったものです。上層雲はさらに見た目によって「巻層雲」、「巻積雲」、「巻雲」の3つに分類されます。それぞれ写真付きで紹介します。
1,巻層雲
巻層雲は空を覆うように発生する薄い雲です。薄雲やかすみ雲とも呼ばれます。この雲が広がっているときは空が白くかすんだようになります。また、この雲があるときは太陽や月の周りに暈が見えることがあります。
2,巻積雲
巻積雲は白く細かな雲の粒がたくさん集まってできている雲です。その見た目からうろこ雲やイワシ雲とも呼ばれます。腕を伸ばして人差し指を立てると、個々の雲は人差し指の幅より小さいです。
3,巻雲
巻雲は空にはけで描いたような白く繊維状の雲です。すじ雲とも呼ばれます。雲10種類の中で最も高い高度に存在する雲で、高層の風が強いときに見られやすいです。
・角板とは?
大気中で水蒸気が昇華(気体から固体に変化する状態変化)すると氷晶と呼ばれる小さな氷の粒ができます。氷晶は温度や水蒸気密度によって形を変えます。様々な形をする氷晶の中で、図に示したように高さの低い六角形をするものがあります。これは「角板」と呼ばれ、大気中では六角形面をほぼ水平にして浮いているものが多いです。
・光の性質(2020年度現在の教育指導要領をもとに作成)
環天頂アーク・環水平アークは,光の屈折という現象によって見ることができます.ここでは,小学校3年生理科,中学校1年生理科,高校物理で学習する「光の性質」について解説します.
1, 光の反射
小学校3年で,光は直進し,鏡に当たると跳ね返ることを学習します.この,光が跳ね返えることを反射といいます.
下の図は,光が鏡で反射するときの模式図で,この図の,鏡に入ってくる光(橙)を入射光,出ていく光(赤)を反射光といいます.また,鏡の面に垂直な直線(---)と入射光,反射光の間の角度を,それぞれ入射角,反射角といいます.この2つの角度は同じ大きさになります.
2, 光の屈折
光が異なる物質同士の境界へ進むとき,境界の面では光が曲がることを光の屈折といいます.鏡の面に垂直な直線(---)と屈折光の間の角度を,屈折角といます(下図参照).
3, 光の全反射
ガラスや水から空気へ光が進むとき,入射角に比べて屈折角が大きくなる性質を持ちます.したがって,入射角を大きくしていくと屈折角は90°に近づき,やがてすべての光が反射するようになります(下図参照).このことを,光の全反射といいます.
4, 屈折の法則
ここでは,高校物理・数学Ⅰで学習する,屈折の法則の原理を,中学校までの学習内容を用いて解説します.
中学校理科では,光が空気からガラスへ進むとき,屈折角は入射角より小さくなり,逆にガラスから空気へ進むときは大きくなることを学習します(下図参照).この,入射角と屈折角の間には一定の法則があり,これを屈折の法則といいます.
・三角比
この密度と角度の関係を,高校の数学Ⅰで学習する「三角比」というものを用いて表すことができます.
以下に,中学生に向けた三角比の説明を記述します.
初めに,中学2年生で学習する「相似」について確認します.
上記の図のような,拡大・縮小しただけの図と元の図の関係を「相似」といいます.
相似な図形は,以下の2点の性質を持ちます.
-
- 対応する線の長さの比はすべて等しい.
- 対応する角の大きさはそれぞれ等しい.
さらに,「対応する角の大きさがそれぞれ等しいとき,対応する辺の長さの比は全て等しい.」という関係があります.
この関係を応用したものが,三角比(高校数学Ⅰ「図形と計量」で学習)です.
三角比にはいくつか種類がありますが,ここでは,理解に必要となる「正弦(せいげん)」について説明します.
「正弦」(別名:sine⦅サイン⦆)とは,直角三角形における,高さを斜辺の長さでわった値を指します.
通常もっとも簡単な整数比で表されます.
また,異なる2つの直角三角形において,対応する角度が一定であれば,3つすべての角度が同じ大きさを持つ「相似」の関係であることがわかります.
よって,相似の図形の性質1が成り立ち,正弦は角度の大きさによって変化することがわかります.
以下の図のように,ある角度を「θ*」という文字でおくと,この図における正弦は「sinθ」と表すことができます.
* θについて
新しく登場した「θ」に混乱される方もいらっしゃるかもしれませんが,数学の世界では,角度を表す文字として一般的に使われています.
難しく感じる方は「x」など,身近な文字に置き換えて考えてください.
また,上記の図において,高さを「a」,斜辺を「b」としたとき,正弦は
sinθ = a/b
と表せます.
正弦を用いて,屈折の法則は
式
で表します.
この値は,透過する2つの物質の組み合わせによって変化します.
・光の波長と分光(2020年度現在の教育指導要領をもとに作成)
ここでは,高校物理で学習する「光の波長と分光」について,中学校までの学習内容を用いて解説します.
光には加法混色という現象がある。これは光原色(赤、青、緑)を混ぜることによって明度を増す現象である。
太陽の光には様々な色の光が混ざっているため,加法混色によって,私たちには白い光として見ることができます.この光の色の違いは,光の振動数(真空中の波長)の違いによって起こります.太陽光をプリズム*に入射させると,2回の屈折によって,屈折率の異なる様々な色の光が分離し,光の振動数の順に並んだ光の帯が見られます(下図参照).このように,光が振動数の違いによって分離することを光の分散といいます.
*プリズム
・太陽高度
水平方向を0度、天頂(頭の真上)を90度として、太陽と水平のなす角を太陽高度という。日の出と日の入り時の太陽高度は0度、正午に太陽高度が1日の中の最大となる。