三相インバータ1台で駆動可能な2自由度制御形ベアリングレスモータ

概 要

 これまでの2自由度制御形ベアリングレスモータでは,回転子の半径方向2自由度(x,y)を位置決め制御するために,三相インバータを1台,また,回転(θz),すなわちモータ駆動に三相インバータ1台,合計2台が必要でした.また,当研究室では,三相インバータ1台のみで,零相電流を用いて,永久磁石モータのベクトル制御(d軸,q軸)と,1自由度の磁気浮上制御を実現しています.しかし,運動自由度の観点からは,回転(θz)の1自由度と磁気浮上制御1自由度,合計2自由度です.そこで,三相結線で半径方向2自由度(x,y)の位置決め制御,零相で回転(θz)の1自由度,合計3自由度を制御します.回転には,単相モータの原理を利用します.

提案回路:零相電流を単相モータ駆動に利用

 

モータ構造

 原理検証機として,6スロット6極表面磁石形モータを採用しました.固定子には,三相4極の磁気支持巻線と,単相6極のモータ巻線が施されています.モータ巻線は零相負荷となります.この6スロット4極の支持巻線には,4極以外に8極の高調波成分が含まれ,磁気支持力に悪影響を及ぼします.具体的には,この8極の磁界が回転子の回転と反対方向に回転するために,単位電流あたりの磁気支持力が回転子の回転角度によって変わってきます.この支持力変動は,制御により抑制可能です.単相モータ駆動のために,固定子の歯の正面のエアギャップは,非対称となります.歯の中心と,回転子磁石の中心が一致した時にコギングトルクが発生し,いわゆるデッドポイント(トルクが発生しない角度)を回避します.

モータ構造概略

 

磁気浮上回転実験

 実際に,テスト機を製作し,実機実証を行いました.黄色の樹脂塗装を施した回転子の矢印のシールに着目してください.はじめは磁気浮上していませんので,手でこすっても動きません.その後,磁気浮上制御をはじめると,回転子がゆらゆらとなり磁気浮上が確認できます,この振動はコギングトルクによるものです.磁気浮上の後,回転していることが確認できます.現在,位置決め精度の向上,性能評価,および巻線統合化を検討中です.