ホモポーラ形ベアリングレスモータ

概 要

ベアリングレスモータは機械的摩擦が無く,したがって一般的なモータと比較して摩擦損失が低減されるため,高効率な超高速ドライブが期待できます.また,従来の磁気軸受けと比較して,シャフト長を短縮できるため,危険速度域を高域に設定できるため,さらなる高速化が期待できます.本研究ではファーストステップとして,電圧100V,出力100W,回転数100000rpmでの非接触回転を目指しています.ホモポーラ形ベアリングレスモータは,回転子が鉄心のみで構成されるため,堅牢であり,永久磁石形のような複雑な飛散防止対策は不要です.また,従来の永久磁石形ベアリングレスモータと異なり,回転子の磁気浮上制御に角度検出が不要であるため,信頼性を向上させることができます.

提案構造

下図は,当研究室で提案しているホモポーラ形ベアリングレスモータの構造を示しています.2ユニットが連結している構造です.固定子間にはスラスト方向に着磁された永久磁石を組み込み,バイアス磁束を発生させます.突極構造の回転子は,積層鋼板・バルク鉄シャフトで構成され,両ユニットで半ピッチずれています.このバイアス磁束により,回転子鉄心部は着磁され,スラスト方向から見ると永久磁石同期機と同じ構造になります.各ユニットの固定子には,三相2極の磁気支持巻線と,電動機巻線が施されています.ホモポーラ形ベアリングレスモータは,回転主軸の並進2自由度と傾き2自由度,合計4自由度を能動的に制御します.スラスト方向の運動は,固定子-回転子間の磁気カップリングにより受動的に拘束されます.図では,片側の鉄心は三突極構造であり,したがって6極の回転子となります.従来のホモポーラ形ベアリングレスモータでは,8極構造でしたが,本研究では駆動周波数を低減するために,6極を選択しました.6極の場合,注意深く設計しないと磁気支持が安定しない恐れがあるので,本研究では安定な磁気支持が可能な磁気浮上巻線構造を検討しました.

試作1号機

試作は,モーションシステムテック社の齋藤様にお願いしました.回転子鉄心部の直径は20mm,片側の鉄心部のスラスト方向長さは15mmであり,磁気的なギャップは1mmです.この動画は,ベアリングレスモータの試作1号機の磁気浮上の様子です.2011年度に当時修士2年の福原久雄君,修士1年の夏目龍一君が磁気浮上させました.タッチダウンしている状態では,保護ベアリングの内輪とシャフトが接触しているため,シャフトを回すと摩擦で内輪も回ります.いったん磁気浮上すると,シャフトは磁気浮上しているため,内輪は回転しません.鈴木大君がこの研究に取り組み,最終的には10万rpm!での磁気浮上回転を実現しています.