アルテミア

分類:節足動物門甲殻綱無甲目ホウネンエビモドキ科アルテミア属
学名:Artemia franciscana
英名:brine shrimp

孵化直後のノープリウス幼生

アルテミアの卵(休眠卵)は、ブラインシェリンプ(brine shrimp)の名前で稚魚やイソギンチャク、タツノオトシゴなどの餌用として、また、シーモンキー(sea monkey)という名前で教材・ペット用飼育キットとしても商品化・販売されています。

成体の雄と雌

アルテミアは、ヨーロッパ・北アメリカの塩湖や塩田に生息するエビの仲間で、日本の水田に生息するホウネンエビによく似た姿をしています。成体の全長は15mm程度で、体は全体的に白っぽく透明感があります。成体の雌雄は、第二触角の発達程度と卵嚢の有無で区別できます。雄では第二触角が大きく発達し、交尾の際に雌をとらえる把雌器官として機能しますが、雌では未発達で、腹部に卵嚢がみられます。成体の腹部には多数の鰓脚があり、常にそれを動かしながら、主に腹を水面にむけて泳ぎます。幼生期には鰓脚の数が少ないため、ぎこちない泳ぎ方でますが、成長するにつれて鰓脚の数が増え、滑らかな泳ぎになっていきます。

アルテミアの雌は、非休眠卵と休眠卵という2種類の卵(いずれも約0.2mm)を産みます。非休眠卵は、雌の卵嚢内で孵化し、ノープリウス幼生がとして、産み落とされます。この幼生は3~4週間で成体になり、交尾・産卵を行なうようになります。一方、休眠卵は、胞胚~嚢胚の状態で休眠したまま水中に産み落とされ、水中に放置されると数十日後に孵化します。また、休眠卵は乾燥状態でも長期間生存でき、塩水に浸されると休眠からさめて、24時間程度で幼生が孵化します。いつでも必要なときに必要な量の幼生を孵化させることができるため、水性生物の餌や教材・ペットとして利用価値が高いのでしょう。この特徴は、実験動物としても非常に重要な利点のひとつです。
竹内研究室では、アルテミアを用いて、内分泌撹乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)の影響について研究しています。これまで、ビスフェノールA(BPA)・ジエチルスチルベストロール(DES)・オクチルフェノール(OP)、トリブチルスズ(TBT)、エストラジオール(E2)、テストステロン(T)、20ヒドロキシエクジソンなどの物質で、休眠卵の孵化率や幼生の成長速度、器官形成、脱皮頻度などへの影響を調べてきました。その結果、低濃度のBPAでは幼生の体長成長が抑制され、比較的高濃度のBPAやOP,DES,E2,Tで複眼形成が促進されるということがわかってきました。現在は、特に幼生の走光性や成体の生殖行動などに注目して影響を調べています。

 

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