白色腐朽菌と細菌との相互作用
白色腐朽菌は、他の微生物と同様に周辺環境のみならず、周辺微生物からも影響を受けて様々な応答を行います。もちろん、一方的に影響を受けるだけではなく相互に影響し合っています。その相互影響は様々で、相利共生、片利共生、拮抗などが起こり得ます。あるいは作り出したタンパク質やその他低分子化合物、あるいは細胞そのものによって相互に作用し合います。何らかのストレスに対して防御作用を示すこともあれば、ストレス源を分解したり、攻撃したりすることもあります。場合によっては相手の遺伝子に変異を生じさせたり、代謝系を大きく変動させることもあり得ます。その様に腐朽菌を含む環境微生物は相互に作用し合い、様々な形でその影響は現れます。腐朽菌の成長を促す細菌もあれば、成長を抑制する細菌もあり、リグニン分解や多糖分解を促進・抑制する細菌も存在すると考えられます。
そこで当研究室では、人為的に菌叢構造に安定性をもたせた白色腐朽菌‐細菌複合微生物系を複数作出し、これら複合微生物系が木材を腐朽する際の、腐朽菌の生育、木材腐朽特性や酵素活性、あるいは菌叢構造の変動を調査し、統計的に解析を行うことで白色腐朽菌の木材腐朽特性に影響を与えると思われる細菌の予測を行っています。予測された細菌は、白色腐朽菌と共培養することによりその効果の検証を行います。その結果から腐朽菌に対して様々な影響を及ぼす細菌を選抜し、それらを上手く組み合わせて腐朽菌に与えることで、恒久的な変化を及ぼす遺伝子組換えを一切用いず、微生物の機能だけで木材を自在に分解する技術を確立しようとしています。