投稿者:福島 英夫(昭和45年人文学部法経学科卒)
私が入学した翌年(1968年)に、日本のGNPは西ドイツを抜いて世界第2位になったのを覚えている。3年次から経済政策論のゼミに入れてもらったが、当時「田子の浦港」をはじめ全国の公害が深刻になっていて、企業経営と公害被害についてよく議論をした。経済成長の光と影を教えられた時代だった。
71年に卒業し、地元の金融機関に就職したが、その年のお盆に「金-ドル交換停止」というニクソンショックが起こった。何事かと戸惑ったが、数年後フロートと呼ばれる変動相場制に移行した時には、これからドルの衰退と円の興隆が始まると話し合ったことを思い出す。歴史は単純でなかったが、40年かかってドルは対円で約1/5になった。
2013年が日本の経済政策史上のエポックになることは、間違いない。「アベノミックス」と「黒田マジック」の登場だ。
最大の特徴は、周知の通り「大胆な」とか「異次元の」といわれる金融緩和。私達が習った金融政策や中央銀行の役割とは正反対の「非伝統的」政策だから、「違和感」を覚える方も少なくないだろう。しかし「20年デフレ」の影響(とりわけ若い世代と経済弱者への深刻な影響)も現実だから、「何もやらない罪の方が大きい」などと開き直られると、それもそうだなあと「二重思考」に陥る。もやもや感から、「リフレ派」「反リフレ派」の本を何冊か読んでみたが、「出口が難しい」ことでは、一致しているようだ。
しかしながら、バブル景気の発生から崩壊までを人生の最盛期で経験した世代の一人としては、どうしても「既視観」が消えない。
あの頃も、国民の支持率は高く、どことなく危うい高揚感が漂い、「山手線内側の地価で米国が買える」幻想に気付かず、「ソフトランディングは難しい」といって、1,367兆円(三菱UFJR&C)の国富が消えたのを、わずか20年で忘れようとしているかのようだ。