【第93回】旅のすすめ

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投稿者:大石 惇(昭和37年 農学部農学科卒)

古くから旅に関する多くの言い伝えがあります。「かわいい子には旅をさせろ」、「旅は無言の教育者だ」などとも言われてきました。また、悩んだり失恋したりした時、なぜか旅に出たくなります。旅にどのような効用があるのでしょう。
旅は自分を今の場所から別の空間に身体ごと移動させることです。それが何故教育者や心理学者や医者の代わりをするのでしょう。

旅には人それぞれに計画し、準備し、実践し、総括する行為が伴います。旅は佳きにつけ悪しきにつけ想い出として深く人の心に残ります。旅をすることは、現状を見つめなおすためにも、また新しい発想を呼び起こすためにも、人生を豊かにするためにも、なくてはならないものではないでしょうか。
旅を企画し総括するまでの一連の行為は、日常の生活そのものであり、人生そのものだと思えてなりません。それらが積み重なったものがその人の人生を形作ってゆくものだと考えられます。
現実の空間から他の空間に身と心を移すことによって、現在の自分の姿や立場を客観的に見ることが可能になって目覚め、同時に旅は五感に新しい刺激を与え感動を呼び起こしたり思索したり、非日常的な空間に包まれるから、リフレッシュされるのだろう。

最近、家の中や住んでいる地域から大きく外に出たがらない若者が多くなっていると言われている。小中高生も行事やクラブ活動も忙しく、経済的にも大変だということもあるだろうが、旅に出るのを躊躇するのは実にもったいないと思う。工夫して時間を作り、安く行ける方法を編み出して行く旅もまた楽しいものだ。若く体力もある感受性の強い時期に、無言の教師からいっぱい教わって欲しい。それは生きてゆく過程で、大きな財産となるだろう。