投稿者:風神 裕(昭和46年卒 工学部電子工学科、浜松工業会理事)
60歳で三菱電機を定年退職、その後、縁あって(財)工業所有権協力センターに勤めています。この職場は、特許審査に関わる先行技術の調査を主たる業務としており、民間企業、主に、製造業出身の方が大半です。職員の平均年齢は62.4歳、第二の人生ということもあり、多種多様のクラブがあり、私も「パソコン同好会」に入会しています。
このパソコン同好会で、今年度「ラズベリーパイを使った電子工作(電子箱庭)」を行うことになりました。ラズベリーパイとは、もともと基本的なコンピュータ科学の教育を促進することを意図に作られた超小型のコンピュータですが、最近はロボットコンテストなどで見かける小型ロボットの制御などに使われています。でも、そのような高級なものを作るのではなく、マイナビ出版の「やさしくはじめるラズベリーパイ」を教科書に、パソコン制御の初歩を学ぼうというもの。65歳前後の老人15名が参加、3月末までに、LEDを交互に光らせる、温度・湿度センサーを使う、圧電スピーカーを鳴らす、サーボモータを動かすことなどが目標。この種の仕事に馴染みのある人にとっては、ブレッドボードに部品を差し込み、ソフトウェアで動作させるだけの単純な作業だが、初心者にとってはなかなか思い通りに進まないことが多々存在。まず、ラズベリーパイにOSのインストールが一苦労、次に、ラズベリーパイのGPIO(汎用入出力)から信号を簡単に取り出せるT型接続基板を使うが、この基板の組立ては40カ所の半田付けが必要。半田付けは入社当時の2年間、実験室で行って以来約40年振りの作業、半田鏝は当時と比べ温度制御など格段の進歩を遂げているが、一方、私は確実に老化。困ったことに鏝先にあるピンと半田が良く見えない、1-2-3-4の半田付けリズムを覚え、後は、心眼を開きブラインドで作業。ピン間の半田ブリッジの確認はまず不可能。その為か、プログラムが上手く走らない時は、半田ブリッジを疑ってしまう。
回路組立ては、ブレッドボードに部品を差し込むだけだが、ソフトウェアのタイピングに一苦労。Pythonで書かれたプログラムを教科書通りに打ち込めば済むのだが、「.」と「,」の差を読み取れず、その為2~3回は打ち直し(後で分かったが、教科書にはサポートサイトがあり、ここからプログラムのダウンロード可能とのこと)。要は、視力低下が大きなネック。
ラズベリーパイ上にPythonで書かれたプログラムを、日頃使用しているWindowsパソコンから修正できる対話環境を作ることも可能。ラズパイのSSH(Secure Shell)とVNC(Virtual Network Computing)を有効に設定し、パソコンにRealVNCというプログラムをインストールすればOK、驚いたことにRealVNCは無料で入手可能。使用しているラズベリーパイのIPアドレスを調べれば、パソコン上にラズパイの画面を表示でき、ハッカーにでもなったような気分になれる。
テレビでロボットコンテストを見ていると、ロボットが思い通りに動かない時、いとも簡単に修復しているのに正直驚かされる。それに比べて、私たちの電子箱庭は3月末までに無事ゴールに辿り着けるのやら・・・