【第188回】雑感

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投稿者: 寺田 直己(平成15年度理学部化学科卒業、平成17年度理工学研究科化学専攻修了)


小学校や中学校の理科の実験で、色が変わる、泡が出ると言った変化に魅了され、理科、特に化学が好きになりました。また、その実験を分かりやすく楽しそうに教えてくれる先生という仕事に興味を持ちました。高校1年の時の化学の先生の圧倒的な知識量と、説明と板書の分かりやすさ(今と違い当時は板書と説明中心の授業形態でした)に感動を覚え、同じように化学を教えたいと考え、高校理科教員という職業を目指し、理学部化学科に入学しました。大学では決して優秀な学生ではありませんでしたが、小林健二先生のもと、3年間勉強させていただきました。日々の実験だけでなく、学会に参加する機会も与えていただき、様々な経験ができました。また、無事に教員免許を取得でき、大学院卒業と同時に教員として採用していただきました。

私は静岡県の高校教員として採用されて19年目になります。いつの間にか、中堅とかミドルリーダーと呼ばれる世代になってしまいました。これまでに2校に勤務しました。就職も多い学校と進学中心の学校と、地域で担う役割が違う学校を経験できました。2校の経験で思ったことは、「どの子も高校生であり、一所懸命さや子どもらしさは同じである」ということです。そんな子どもたちと、時にはぶつかり、時には喜びを共有しながら、担任を長い間経験できたことは、今の自分の基礎となっています。また、多くの先輩、同僚の先生とも知りあうことができ、時に怒られながら、楽しく仕事ができました。

さて、学校2校を経験した後は、1年間県外大学の教育行政学の研究室に派遣され、その後、県教育委員会高校教育課に、そして現在は知事部局に出向しています。県総合教育会議の運営に携わっており、知事部局とは言え教育にはぎりぎり関わっています。正直なところ、今すぐ高校に戻って担任も授業も部活もやりたいと思うこともあります。しかし、一方で教育委員会や知事部局といった「学校から離れたところから学校現場を見る」ことは、非常に有意義なことだとも思っています。一歩離れることで分かる学校現場の良いところ、改善していきたいところ等、最前線にいると見えなかった部分が見えたことで、今度担任をやるときに取り入れたい視点、校務分掌(学校での係)ではこんな工夫ができるだろうといった、自分の教員としてのスキルを上げるヒントをもらうことができています。こうして何とか日々の仕事ができるのも、温かく見守ってくれている周囲の行政職のみなさん、大学で御指導いただいた先生方、これまで自分に関わってくれた諸先輩方や同僚やそして生徒たちのおかげです。また、毎日遅くまで実験していた時の経験は、仕事に取り組む姿勢の基礎を作ってくれたと感じています(もちろん遅くまでいるのが正義ではないですが)。多くの人への感謝を忘れずに、これからも子どもたちのために、静岡県に貢献できればと考えています。

最後に、大学時代の私に様々なことを教えてくれた先生の一人である山中正道先生(静岡大学から2020年に明治薬科大学に御異動)が去る3月に御逝去されました。一緒に研究室で過ごした日々が忘れられません。心より御冥福をお祈り申し上げます。