投稿者:竹田 次夫(昭和45年 小教育心理卒)
本年1月に静岡新聞社より出版された「静岡の川」は、静岡県を流れる天竜川・大井川・安倍川・富士川の四大「東海型河川」を中心に自然と文化の両面から『川』について述べられた、わが恩師・松本繁樹先生のご著書です。
永く静岡大学で自然地理学の分野で研究を進められ、私たち学生の多くは、周氷河地形や河岸段丘、自然災害史等の地形学に関する研究フィールドに導いていただきました。
私が最初に受講した授業で、本書でも触れられている「安倍川の河床変動」について、その計測の仕方や変動量の大きさの説明を聞き、「目から鱗」を感じたのを思い出します。特に、その後に東海道線の安倍川鉄橋が架け替えられたり、安倍川橋の西側二本の橋脚が大雨後に沈下したりする事態が起こり、先生の研究の的確さと当時盛んであった砂利採取の影響の大きさに、学問の力を感じました。
自然と人間の営みの関係の深さは、本書のすべてに流れるテーマで、先生の研究成果の集大成と言えます。
日本の川の特徴や静岡県に流れる四大河川を例に、人間の生活に直結する自然環境としての川の働きが分かりやすく説明されています。静岡県に住む私たちや教育に携わる同窓会諸氏にとって、生活を支え大きな影響をはらんでいる『静岡の川』について知る必読の書であると思います。先生の静岡県と静岡の豊かな自然への愛情を感じる一冊です。読まれて『川』への新しい知見を創ってみませんか。