投稿者:田中 裕章(1977年 工学部電子工学科卒業)
皆さんは、BIとAIという言葉を御存知だろうか。BIとは、Before Internet、AIとはAfter Internetのことで、インターネットが生まれる前の生まれか、後の生まれかによって価値観が全く異なってくるという考え方だ。1960年にタイムシェアリングシステムが発表されてから、1990年に爆発的に広まるまで35年の年月を経て、現在ではほとんどの人が恩恵を受けている。一般化されてからの時間を考えても、30年を区切りとすると、30歳までがAI、それ以上がBIということになる。
私を含むBIの世代は、パソコンを使い始めて、携帯電話、スマートフォンへと、使う機器が発展し、クラウドデータと接触を増加させてきたが、AIの人たちは、パソコンを経由せずにいきなりスマートフォンを持ち、生活の中で使いこなしている。情報は探すものではなく、取ってくるものである。彼らは、時間と空間を意識せずに移動する。他の人の意見を聞きたければ、ネットに語りかけると、あっという間に千を超える人たちがバーチャルに集合し、議論を開始する。移動する必要もなければ、集合する場所を探す必要もない。行きたい場所があれば、そこを入力するだけで、移動手段、時間、座席の予約から旅先での乗り物手配がすべて人を介さずに終了する。後は、決まった通りに行動するだけで目的が達成される。
さて、我々BI派は、この世界をどのように乗り切ればいいのだろうか。先日、写真家で冒険家の石川直樹さんの講演を聴く機会があった。彼は、世界各地を周り、そこに住んでいる人を写真に収めている。とにかく、出会う人を尊敬し、生き様に共感し、その人に近づきたいと思いながらシャッターを押す。「人との付き合い方のコツは何ですか。」という問いに対して、「挨拶をする。そして、自分がその人のことを尊敬し、同じような経験を持ちたいと思っていることを直接話しかける。チベットでも、グリーンランドでも、どこでも。それで知り合いになれる。」さらに曰く、「土地が面白い。住んでいる人には感動をもらえる。私は一生感動しながら生きて生きたい。」
静岡大学を卒業して、早くも36年が過ぎた。その間、大学のOB会、会社生活、地域の活動を通して、先輩、後輩と直接付き合い、影響を受けてきた。その中にいるAIも、BIも、先輩、後輩という名前の下に、何故か同族のような気がして、すぐに打ち解ける。真実の姿を自分自身で確かめ、感じる。そんな、アナログチックな世界がいつまでも続くことも楽しいのではないでしょうか。