投稿者:佐津川 貴子(生物地球科学科卒)
静岡大学生物地球科学科に2003年入学、2007年に大学院へ進学し、2012年に博士課程を修了した佐津川貴子と申します。地球科学科の道林研究室に7年間在籍し学位を取得した後、静岡大学防災総合センターで増田センター長のもと半年間学術研究員として在職し、昨年10月にマッコーリ大学(豪州)にResearch Associateとして着任しました。シドニーライフを始めてはや2ヶ月が経過しましたが、新しい環境に慣れるのと引越し等々であっという間に過ぎてしまったように思います。
静大在学中は、主に日本列島から産出するマントル捕獲岩を用い、最上部マントルの構造発達過程に関する研究をしました。そもそもマントルは、大陸や日本列島のような場所では地下30kmよりも深いところにあり、私たちは直接手にする事ができません。しかし、火山のマグマが噴出する際に、地下深部にある火道(マグマの通り道)の壁の岩石(捕獲岩)をひっかけてくることがあり、マントルから捕獲されてきたものをマントル捕獲岩と呼んでいます。私が現在所属している研究センター(GEMOC)では、このマントル捕獲岩の地球化学的研究が盛んに行われており、私はここで、アフリカ大陸、オーストラリア大陸のから採取された捕獲岩を用いて、引き続き最上部マントルの進化について研究を行っています。
海外生活は、静大在学時代のフランス留学(モンペリエ第2大学)に続き二度目ではありますが、やはり、身寄りもない異国の地で暮らすことには多少なりとも不安がありました。幸運にも、ボス夫妻(Prof. Suzanne Y. O’Reilly & Prof. William L. Griffin)や、以前国際学会やモンペリエ留学時代に知り合った研究者の方々、大学のスタッフや研究室の秘書さんなど、心強いメンバーに囲まれ恵まれ、今日に至っています。Tax number(納税者番号)取得や、Superannuation(年金)申請など、渡豪後の生活の立ち上げは想像した以上に煩雑で、かなりの時間を費やしましたが、皆さんに助けて頂き、本当に感謝しています。研究室の同僚の方が、「何かあったらいつでも言ってね」と言ってくれますし、休みの日となれば、同じ研究室のメンバーやアパートのシェアメイトが外に連れ出してくれ、着実にシドニー探索を進めています。
シドニー到着後の2ヶ月間は、大学院生用に大学が借り上げているアパートに入居させて頂き、オーストラリア人、ペルー人、ロシア人の3人の大学院生と一緒にシェアしていました。生活習慣は異なるものの、過半数が留学生で同じような境遇の者であり、みんな良い方々で毎日楽しく生活していました。しかし、ここは大学院生用のため2ヶ月で退去しなくてはならず、ついに自力でアパート探しをしなくては!と思っていたところ、ちょうど同僚の知り合いが引っ越すとのことで、そこへ移る事にしました。昨日、引越しが終わって、この原稿を書いているところです。大学、駅、大型ショッピングセンターが徒歩10分圏内にある便利なところで、当面住むには問題なさそうです。
ただいま、南半球は夏真っ盛り。真夏のクリスマス、ニューイヤーを迎えました。12月には、理学部主催、地球科学教室主催、研究チーム主催など、大学内でのクリスマスパーティーが立て続けにありました。ちょうど、年末&年度末で、休暇前の忘年会という雰囲気でしょうか。新年の行事ははっきり言って皆無ですが、シドニーといえばニューイヤーイブ(大晦日)の花火が有名で、観客動員数160万人を誇り、海外からもわざわざ来られるだとか。今年は知り合いのつてで、花火の全貌を見渡せる少し離れた海岸から、バーベキューをしながら鑑賞し、翌日2日から早速仕事初めとなりました。
物価が着実に上昇し続けているオーストラリア。家賃も度肝を抜かれるくらい高く、学食のランチでも軽く10ドルは下らず。それでも、生鮮食品は割とお手頃な価格なため、自炊をしていれば、物価の高さをそれほど感じません。相変わらず、シドニーっ子が何をしゃべっているのか聴き取れないですし、車内アナウンスが全くないバスは複雑怪奇。でも、これでもかというくらいのクリスマス商戦がやっと明け、早朝の静けさの中、鳥が賑やかに鳴き始めて、緑豊かなキャンパス近辺を散策すると、恵まれた環境だとつくづく感じています。セミナーやワークショップに参加したり、徐々に知り合いが増えつつある中で、吸収すべきたくさんの新しい知識が次から次へとやってきます。これらの情報が消化不良とならないように、じっくり反芻しながら、研究に励みたいと思います。