• 流況変化に対する河川-海洋沿岸生態系の応答:狩野川水系における解明と生態系保全策

    狩野川・柿田川(2020~2024予定) 代表:塚越哲(静岡大学教授)

    • 研究目的

    ①豪雨イベントと放水路による水量調節が、下流域や沿岸の構造や生態系に及ぼす影響を、水位変動や河床構造、さらには水文モデルから明らかにする。

    ②豪雨イベントの前後、放水路分岐点の上流と下流などを対象的にとらえ、底質、フロラ、ベントス、微生物、非生物要素の挙動を明らかにし、豪雨イベントと流量調節に対する環境応答を総合的にとらえる。

    ③研究成果を統合し、放水路という特色をもつ河川における生態系の保全や生物多様性の保護に生かす管理手法を提案する。

    • 背景と研究の概要

    狩野川は、豪雨時における下流の氾濫を放水路の建設によって克服した河川であり、このような河川において流況変化が河川や沿岸域(海洋)の生態系に与える影響を観測する。また建設後50余年経過する放水路分岐点の上流と下流において、フロラから微生物に至るまでの多様な生物、有機および無機物質の挙動をとらえて、放水路の生態学的影響を明らかにする。さらに豪雨時の水の挙動をモデルと河川構造の精査によってシミュレートし、実際の流量観測でクロスチェックを行いながら、豪雨時の流量予測体制を確立する。これらによって放水路の当該河川におけるより適切な運用方法を生態系保全の観点から考察する。

    • 2021年度(令和3年度)の主な成果

    図1.令和3(2021)年度に明らかになった主な研究成果

    一般研究移行後2年目の今年度は、放水路分岐点よりやや下流・17km付近に形成される狭窄部の河川形状の評価、植生の特性が明らかになった他、放水路出口の陸源堆積物の広がりがつかめ、中下流域の水生昆虫の分散を遺伝子マーカーで明らかにした。また、生息する貝類と微生物の共生について考察を進めた。また海水中に放出されたアユ成魚の塩分耐性や河川流量が一次生産に関与する様子などもとらえられた(図1)。この中で狭窄部での川幅と植生に関する新たな知見について以下に述べる。

    • 17km付近の狭窄部に見られる川幅の縮小と植生

    図2は放水路建設前の昭和34年と建設後約半世紀経過した平成29年の河口部から20㎞付近までの川幅を連続的に比較したものである。昭和34年に比べ平成29年では川幅が減少した地点が何カ所か認められるが、特に河口から15~17km付近(分岐点は17.8km)では大幅な縮小がみられた。逆に分岐点の上流側では川幅が広がっている。17km地点の河川断面の変化を昭和34年から平成14年にかけて資料に基づいて連続的に追うと、その断面は「船底型」から「複断面型」に変化したことが追跡できた(図3)。

    図2.放水路建設前後の川幅の比較.矢印は川幅縮小域

    図3.17km地点の河川断面の変化

    一方、16km付近では、近年河川管理上伐採の対象になるメダケが繁茂していることが知られている。今回の観測ではメダケの繁茂するエリアが洪水時の無次元掃流力の高いエリアと一致する(図4)と共に、同じく洪水時のSDI値の高いエリアと一致

    図4.16km地点松原橋付近のメダケの繁茂エリア(左図赤斜線部)と洪水時の無次元掃流力が大きくなるエリア(中、右図赤食部分).

    することが明らかになり、これは放水路下流で川幅が狭まり、断面が複断面型に変化したことと関連があることが示唆された。

    2022年度は他の個別研究の進展を促進するとともに、それらをより有機的に結び付けて河川管理に資する方策に結び付ける方向で進めてゆく。

  • 準備中・・・・・

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