シティズンシップ教育-Citizenship Education

挑戦的萌芽研究

シティズンシップ育成のためのセカンドステップとしての理科学習プログラム開発と実践

事業の概要: 1970年代アメリカで始まったキャリア教育の後、90年後半に先進国を中心に児童・生徒のシティズンシップ教育が展開されるようになった。日本でも2006(平成18)に経済産業省がシティズンシップ教育宣言を行い、研究指定校等による実践が行われたが大きな拡がりは見られず、若者を中心とした社会問題は残ったままである。この要因の1つを、社会参画に必要なコミュニケーションスキルの不足として 、アーギュメントスキルの育成を目指した理科授業の実践が積極的に行われ、「ライティングのアーギュメント」に関しては一応の成果が報告されている。とは言え、十分との認識は得ていない。平成21年から代表者および共同研究者が協働して取り組んできた「教科でのキャリア教育の導入実践」によって、生徒に理科学習の有用性を実感させ職業観や就労観を育成することによって、将来の社会参加のための意識の醸成を図ることができた。これをシティズンシップ育成のためのファーストステップと位置づけ、教育基本法の定める「社会の形成者としての国民の育成」に必要な要素の内、スキル、特にアーギュメントスキルの獲得のためのアクションをセカンドステップと位置づけて、スキル獲得を目指した理科学習プログラムを開発し、実践結果からその効果と次のステップへの示唆を得ることを目的とする。

研究の特徴:

 1.高レベル放射性廃棄物地層処分問題を議論の題材としたこと

 上述のように、理科学習へのキャリア教育の導入によってシティズンシップ育成の一端を担うことができた。しかし、職業人として将来社会の一員となることを意識させたにとどまり、社会の意思決定や運営に参加し、多様な関係者と積極的に関わろうとする資質の育成には及んでいない。その達成には、相互交流や意思伝達のための技術や方法を身につける必要があると考え、まずスキル獲得を目指し、特にアーギュメントスキル(討論の技術・技法)に焦点を当てた。そこで、平成2022年の文科省イニシアティブ「高レベル放射性廃棄物処分地選定に関する日本型合意形成モデルの構築(代表;興直孝)」および平成23年~25年の基盤研究(B)「科学技術ガバナンスの形成のための科学教育論の構築に関する基礎的研究(代表;熊野善介)」で得た知見から、中学生にシティズンシップを育成しその能力を発揮するための方策の1つとして、討論のためのスキルを獲得するためには、合意を得たルールの下での実体験に勝るものはないと考えた。そこで、生徒の日常と対極にあるとも言えるが、敢えて“高レベル放射性廃棄物地層処分問題”を討論の題材とした。平成233月に中学2年生でこの問題を取り上げた授業では、問題解決のための合意形成に至るプロセスを体験することによって、多方面の情報とともに他の意見や考えを理解し、自ら考え判断し行動しようとする姿勢を培うことができた。これにより、地層処分問題を討論の題材とすることにした。この問題の喫緊性と困難さに疑義は無いと思う。中学生にとっても近い将来大きな問題になることは間違いない。

2.“高レベル放射性廃棄物処分問題”をiPadミニにインストールしたゲームで取り組むこと

平成23年度時点では、地層処分地選定問題を仮想の島を舞台にゲーム化しインストールしたiPodを活用した。ゲームは、スイスITCで開発したもので、これを中学生が1時間程度で取りめるよう簡略化した。ゲーム開始時に“地質構造・鉱物資源・自然・産業”の4項目に対する影響について、自分が処分地を選定するに当たりどの程度重要だと思うかをあらかじめ設定しておく。ゲームのゴールとして自身が選定した処分地を発表し、質疑応答を重ねていく。この“処分地選定”を現実問題として考えるのは我々大人でも厳しいが、当時まだ多くは普及していなかったiPodで仮想世界を舞台にゲームで取り組むことで、生徒の興味・関心を促すことができた。今回はこのゲームを進化させ、iPadminiにインストールして用いる。