研究の概要
私たちは、真空プロセスを用いた有機薄膜の作製技術の開発と、次世代有機エレクトロニクスデバイスへの応用に取り組んでいます。特に近年は、液晶性をもつ有機材料に着目し、基板界面付近における分子配向、静的構造、動的挙動を明らかにするとともに、それらを利用した界面制御技術の開発を進めています。
また、薄膜形成過程をリアルタイムに追跡するその場(in situ)観察や、多数の条件を系統的に評価するハイスループット実験を組み合わせて、薄膜プロセスの理解と材料探索を効率化する研究基盤の構築にも力を入れています。有機薄膜の材料・プロセスの研究を軸として、機械・電気・ソフトウェアなどの総合的なものづくりを楽しみながら研究を進めています。
主な研究テーマ:液晶の性質を活かした有機薄膜の作製とデバイス応用
液晶は、分子が動きやすい性質と、一定方向にそろって配列しやすい性質をあわせ持つ、液体と結晶の中間状態です。私たちは、この「易動性」と「秩序性」を利用して、有機薄膜の結晶化、分子配列、相転移を制御するプロセスの開発に取り組んでいます。特に最近は、液晶性有機半導体やイオン液晶を対象に、薄膜作製条件が構造や分子配列に与える影響などを調べています。これにより、均一で高品質な結晶性薄膜の作製に加えて、従来の成膜法では得ることが難しい構造や機能をもつ薄膜の実現を目指しています。さらに、液晶の秩序性やイオン移動性を利用した有機トランジスタ、メモリデバイスなどへの応用も進めています。


特徴ある実験手法1:その場観察による薄膜形成過程の理解と制御
薄膜の結晶成長、相転移、化学反応は、成膜中に時間とともに進行するため、作製後の評価だけではその過程を十分に理解できません。私たちは、これらの過程をリアルタイムに追跡する「その場(in situ)観察」に取り組み、対象とする有機分子や薄膜プロセスに適した観察システムを設計・製作・改良しています。成膜中に生じる構造変化や反応過程を直接捉えることで、狙った結晶、界面、分子配向を再現よく形成するプロセスの確立を目指しています。

特徴ある実験手法2:ハイスループット実験技術による薄膜プロセス・材料開発の加速
薄膜プロセスや材料の探索・最適化では、組成・膜厚・作製条件の組み合わせが膨大になります。 この解決策として、単一基板内に組成や膜厚の分布を意図的に作り込んだ薄膜ライブラリを作製し、その構造・物性を網羅的に評価する「コンビナトリアル薄膜技術」が有用です。コンビナトリアル技術は、タンパク質の合成技術として開発され、薄膜では無機材料を中心として90年代後半から技術開発が進みましたが、有機薄膜における有効活用の事例はそれほど多くありません。私たちは、有機エレクトロニクス材料における薄膜構造と物性が、組成・膜厚・作製条件によってどのように変化するのかを効率よく明らかにするため、コンビナトリアル薄膜技術を活用しています。さらに、自動化計測やデータ解析を組み合わせることで、従来は一条件ずつ行っていた薄膜プロセスの探索を、より系統的かつ高効率に進める実験基盤の構築を目指しています。
