シンガポールの数学教育

1.はじめに
TIMSS2015 の結果では、シンガポールは小4・中2とも順位は1位であり,特に中2では,日本よりも低い点数(475点未満)の生徒の割合が低く,高い点数(625点以上)の生徒の割合が高いという特徴は変わっていません。TIMSS2015では,児童・生徒に対する質問紙調査が行われており,算数・数学の学習が好きな児童・生徒の割合をみると,小4では肯定的(「とても好き」+「好き」)に回答した児童は,シンガポールの方が参加国平均より低いものの,日本よりも高いです。さらに,中2では日本の肯定的な割合が参加国平均よりも大きく下回っているのに対して,シンガポールは参加国平均よりも上回っています(I.V.S. Mullis他, 2012, I.V.S. Mullis他,2016)。

また,PISA2015 の結果では、シンガポールは前回調査と比較して得点は下がったが順位は1位であり,日本よりも低い点数(レベル1未満)の生徒の割合が低く,高い点数(レベル6以上)の生徒の割合が高いという特徴は変わっていません。数学的リテラシーを中心として行われたPISA2012では数学に対する質問紙調査が行われており、数学における興味・関心や楽しみに対する4つの質問の肯定的な回答の割合は,どれも日本よりもシンガポールの方が高く、かつ、シンガポールはOECD平均よりも高いことが分かります(OECD,2014a)。

以上のように、算数・数学の到達度を問うTIMSS調査と活用力を問うPISA調査の結果から、小中高を通して、シンガポールは日本と比較して、成績が上位であるだけでなく、数学に対する関心・意欲・態度も高いことが分かっています。以上の背景から,シンガポールの数学教育を分析することは価値があると考えています。

2.論文

・シンガポールの初等・中等教育における数学教育
-教育制度と算数・数学のカリキュラムの分析を通して-

・シンガポールの中等教育における数学教科書の分析-統計領域と現実世界の文脈の問題分析に焦点を当てて-

・シンガポールの中等教育における数学教科書の分析
-理解が困難である指導内容及び現実世界の問題の特徴-
   教科書研究センター大学院生の教科書研究論文助成
(教科書研究センターサイトにリンク)