当研究室は二次電池における反応メカニズムの解明をキーワードに研究を行っています。電池の反応は酸化還元反応、すなわち電極-電解質間の電子の授受によって起こりますが、リチウムイオン二次電池の反応は電極/電解質界面をリチウムイオンが移動することによってなされます。このような界面イオン移動現象は電子の授受と異なり、そのメカニズムが明らかではありません。当研究室では界面イオン移動現象を詳細に調べることで、現行のリチウムイオン二次電池よりも優れた革新型蓄電デバイスの基礎研究を行っています。
研究テーマ1:マグネシウム二次電池
リチウムイオン二次電池ではLi+が電極に挿入脱離することで1電子の反応が起こり、充放電がなされます。これに対し二価のMg2+は1つのイオンで二電子の反応が可能となるため、よりたくさんの電気を蓄えることが可能となります。当研究室では金属Mgの溶解析出反応を負極に利用したマグネシウム二次電池の開発を行っています。マグネシウム金属は電解液と反応して絶縁被膜を形成するため、電気化学的なMgの析出は容易ではありません。当研究室では電解液中でのMg2+の配位状態に着目することで従来では析出困難であった電解液でMg析出を達成しています。また、反応性を向上させるための添加剤についても研究を行っており、特定の無機粒子を用いることで可逆性が大きく改善できることを見出しています。
研究テーマ2:アニオンインターカレーションを利用したハイブリッドキャパシタ
電池のエネルギー密度は作動電圧と蓄電容量の積で表されるので、高エネルギー密度化には高作動電圧および高容量化が必要となります。リチウムイオン二次電池の正極反応は4.2 V (vs.Li+/Li)程度で起こります。これに対し、アニオン種が黒鉛材料に挿入脱離する反応は4.5 V(vs.Li+/Li)以上と高い電位で起こるため、これを用いることで高エネルギー密度を有する二次電池が実現可能です。当研究室ではアニオン挿入脱離反応のメカニズムを解明することで、高いエネルギー密度を有する新規ハイブリッドキャパシタの開発を目指しています。
研究テーマ3:リチウムイオン二次電池の反応解析
リチウムイオン二次電池の反応は電極/電解質界面をLi+が移動することで起こりますが、その仕組みは電解質の種類によって大きく異なります。当研究室では従来の有機電解液だけでなく、水溶液やイオン液体など、さまざまな環境下での界面リチウムイオン移動に焦点を当て、その速度論を中心に調べています。これらの知見は現行のリチウムイオン二次電池の性能向上につながるだけでなく、全固体リチウム二次電池への適応も期待できます。