アーク放電を素早く狭い空間内で消弧させるために「磁気吹き消し」が有効であることが知られています。しかし、消弧に至るまでのメカニズムは完全には解明されておらず、現象的には未知の課題が多く残されています。その現象をより深く理解するために実験的な研究を行っています。
アーク放電を素早く狭い空間内で消弧させるためには、磁気吹き消しなどのいくつかの有効な手段があります。どの手段で消弧させる場合でも、アーク放電の形状、特にその長さを正確に把握することはその特性を知るうえで重要な課題のひとつです。そのために、高速度カメラによるアーク放電の観察とその形状の解析を行っています。同性能の高速度カメラを2台設置して、水平方向と垂直方向の2方向から同時にアーク放電を撮影し、その形状を三次元形状として解析します。
陰極(Cathode)を固定し、通電中の陽極(Anode)を引き離して、アーク放電を発生させます。
(電源電圧500V, 開離速度 50mm/s, 磁束密度 20mT)
永久磁石によってアーク放電にローレンツ力作用させ上方に駆動し消弧させます。
高速度カメラで水平方向から撮影した結果を示します(上図の Front cameraで撮影した画像)。
アーク放電はアーチ状に上方に引き伸ばされています。
次に、高速度カメラで上方向から撮影した結果を示します(上図の Top camera で撮影した画像)。
下図に示すようにアーク放電はM字型に複雑な形状に変形しています。
このような複雑なアーク形状を画像解析し、その長さを求めます。下図はその解析の一例を示しています。
実物の電磁リレー等の内部では見えないアーク放電の様子を、高速度カメラで撮影しその形状と長さを解析することで、定量的にアーク長さの評価を行うことが可能になりました。さらに、永久磁石の配置の工夫により、より解析しやすいアーク形状にする方法を見出しました。永久磁石の磁束密度分布を正確に測定する装置の導入により、今後は、アーク放電の形状と移動特性をより正確に解析することを目指しています。