地域での再生可能エネルギーの導入・促進について学ぶフィールド研修を実施しました《第4回 成果発表》3/10

 2月6日から行われた環境省「令和4年度 教育機関と連携した地域再エネ導入促進及び地域中核人材育成研修」による本学のフィールド研修のイベントレポート、最終回では3月10日に行われたオンラインでの全体交流会での成果発表についてレポートします。

 今回の環境省による研修事業には、本学をはじめ全国15の大学が参加し、それぞれ工夫をこらした研修を行ってきました。そして、すべての研修が終了したのち、3月10日および17日の2回にわたり、参加した各大学の参加学生による成果発表会が開かれました。静岡大学はこのうち3月10日の回に参加し、岐阜大学、弘前大学、別府大学、日本大学、静岡産業大学、大阪産業大学、三重大学の学部生・大学院生たちとともに、それぞれの研修の成果発表を行いました。

 この成果発表に臨むにあたり、学生たちは現地視察終了後、まず一人ずつ視察で学んだことや感じたことについて発表した上で、3つのグループに分かれ、意見交換をしながら、成果発表のプレゼンのスライド・原稿作成を進めてきました。そして、3月10日の成果発表では、代表者3人がプレゼンを行いました。また、ほか2人の学生もアシスタント役として参加し、他大学の発表を視聴、積極的に質問などをしていました。

 静岡大学チームの成果発表では、まず、安全性(Safety)を前提とした上で、エネルギーの安定供給(Energy Security)を第一とし、経済効率性の向上(Economic Efficiency)による低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に、環境への適合(Environment)を図るという〈S+3E〉と称される日本のエネルギー政策の基本方針の下で、再生可能エネルギーの活用と電力使用量削減など省エネの推進が必要とされており、また、再生可能エネルギーは分散型システムを基本とするものであるため、地域での取組みが重要な意味を有していると指摘しました。そして、今回の視察を特徴づけるキーワードとして、〈地域循環共生圏〉および〈固定価格買取制度(FIT)〉が挙げられました。
 そのうえで、浜松市・掛川市での視察の具体的内容が、写真とともに紹介されました。そして、視察のまとめとして、大企業の協賛を得ながら、行政が自立したエネルギー施策を進めている浜松市、地域で受け継がれてきた報徳精神に根ざした住民主体のまちづくり政策の一環として行政と住民が一体となったまちづくりのためのエネルギー政策を展開している掛川市というそれぞれの自治体の特徴が示されつつ、どちらの自治体にも現行のFIT制度の下では再エネ発電から得られる利益が域外に流出してしまっているという共通の課題があり、エネルギー面だけでなく、資金面においても、〈地域循環共生圏〉を形成しなければならないとしました。
 また、再生可能エネルギーの導入・促進はまちづくりと密接不可分の関係にあることが説明され、㈱浜松新電力による地域貢献プランというまちづくりのための資金還元を企図した試みが紹介され、地域の特徴に合わせた地産地消エネルギーの循環型システムを構築し、行政・市民・企業が一体となったまちづくりにつなげていくことが重要であり、そのためには地域や住民の取組みを国が支援していく必要があるのではないかという結論が示されました。

最後に今回の研修に参加した学生の感想をご紹介します。

◇地域創造学環地域経営分野1年生・Oさん
 近年、化石燃料から再エネに変換していくことの重要性がよく謳われている。私も再エネについて興味があった。私が学んでいる地域づくりとどう関連していけばよいのか、地域づくりと関わらせていくにあたっての現状、など「再エネ×地域づくり」を詳しく学びたいとも思っていた。そんな思いから私はこの研修に参加した。
 この研修で学んだことは、再エネ事業と地域は繋がっているということだ。浜松市の視察では、浜松市の職員の方や浜松新電力の方の話から、浜松市の再エネ事業の圧倒的実績、迅速な取り組みは浜松市の経済規模が大きいことが少なからず関係していることが分かった。掛川市の視察からは、昔から根付く報徳訓という地域貢献の意識が再エネ事業に繋がっていることを学んだ。具体的にはかけがわ報徳パワー(株)は、事業で得た収益を株主に配当することはなく、全て地域貢献事業に回しているそうだ。こういった損得関係なく再エネを通してまちを良くしていこうという考えや行動は中々見ない事例だと思われる。掛川市に報徳訓があったからこそできる事業なのではないだろうか。
 このように地域の特性によってそのまちの再エネ事業は変わってくる。また、その地域にマッチした再エネ事業を実行するためには、同時に地域を見つめることが必要だと考える。こうした視察の結果から「再エネ×地域づくり」の重要性を確かめることができた。
 また、この研修は10名の参加者がおり、学部・学年がバラバラだった。再エネのことを学べただけではなく他学年や他学部の方と交流し新たなコミュニティもできた。全体交流会(成果発表会)で報告を聴いた他の大学はゼミで参加しているところもあった。なので、このように研修を通じ新たな交流が生まれたのも静岡大学だからだと感じ、参加してよかったと思う。
 また、研修では「再エネ×地域づくり」の可能性や限界等を詳しく知ることができた。それと同時に、再エネの重要性やまだまだ課題があることも知った。課題を目の当たりにした今、興味を持つだけでなく、当事者になって考え行動したいと思った。研修に参加した人も私と同じ考えだと思う。そういった面でもこの研修は大きな成果があったのではないだろうか。

◇理学部地球科学科3年・Iさん
 今回フィールド研修に参加したことで、再生可能エネルギーと地域とのかかわりについて深く学ぶことができた。地元である浜松市でも再生可能エネルギー推進に向けて力を入れていたということを知らなかったので、今回の研修では再生可能エネルギーの活用に向けての地域の取り組みについて知るきっかけとなった。
 単に地球温暖化といった環境問題を解決するだけでなく、利益を地域に還元することで地元の活性化にもつなげるといった活動についても学ぶことができた。そして、地域創生に対しても力を入れることで再生可能エネルギーを用いた環境活動自体も持続可能になると感じた。今回の研修は再生可能エネルギーについての知見を広げることができる貴重な機会となった。