研究内容

極低消費電力で動作する低雑音超伝導増幅器の開発
電波天文観測や量子コンピュータの分野では、低消費電力で動作するマイクロ波帯低雑音増幅器が必要とされています。力学インダクタンス進行波型パラメトリック増幅器(Kinetic-Inductance Traveling-Wave Parametric Amplifier: KITWPA)は超伝導体を用いた増幅器であり、低雑音、広帯域、高飽和電力の特性に加えて、半導体増幅器では動作が困難なマイクロワット級の極低非消費電力で動作することができます。当研究室では、電波天文観測用ヘテロダイン受信機の中間周波増幅器への応用を目指して、KITWPAの設計や作製、評価を行っています。また、ミリ波帯KITWPAや高温超伝導体を用いたKITWPAの研究も進めています。

広帯域テラヘルツ光センサーを実現するマイクロ波力学インダクタンス検出器
テラヘルツ光(0.1~10 THz)は、紙や布、プラスチックを透過し、物質ごとに固有の「指紋スペクトル」を示す電磁波で、セキュリティや非破壊検査、天文学など幅広い応用が期待されています。当研究室では、テラヘルツ光を検出するセンサーとして、超伝導共振器を利用した検出器 MKID(Microwave Kinetic Inductance Detector: MKID) の研究開発を行っています。MKIDは広帯域・高感度での動作に加え、大規模アレイ化(カメラ化)が容易という特長を持ちます。NbTiNやYBCO薄膜を用いて従来のMKIDよりも高い温度(4 K以上)で動作するMKIDを開発し、従来の半導体ボロメータを超える性能を持つ次世代テラヘルツ光センサーの実現を目指しています。

有機金属分解法(MOD法)による高温超伝導薄膜作製に関する研究
有機金属分解法(Metal-Organic Decomposition: MOD法)は、金属を含む有機化合物を溶媒に溶かし、基板上に塗布してから加熱処理をすることで、金属酸化物薄膜を作製する手法です。真空装置を必要としない簡便な方法であり、大面積の薄膜も容易に作製可能です。当研究室では、フッ素を含まない原料溶液を用いたフッ素フリーMOD法により高温超伝導薄膜(GdBCO薄膜など)を作製し、超伝導特性の評価を行っています。