光の局在

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光の局在(Localization of Light)

一定の空間的構造をもった誘電体の中で光が空間的に局在する現象。誘電率がランダムに揺らいだ媒質中で起こる光のアンダ-ソン局在、周期的な誘電体構造と欠陥を持った媒質中に作られる光の束縛状態などがある。光の局在は、良く知られた電子の局在に対応した波動現象である。光は古典的、電子は量子的波動として、それぞれマクスウェル方程式とシュレ-ディンガ-方程式によって記述される。この時、光学系では、空間的に変化する誘電率が電子系でのポテンシャルに対応した役割を果たしている。

アンダ-ソン局在の場合、局在の微視的メカニズムは時間反転した散乱経路を通った2つの波動の強め合う干渉である。光の場合、この干渉は散乱体へ入射した光のちょうど真後ろ方向に散乱強度が2倍だけ強められるコヒ-レント後方散乱として直接観測される。また、局在を記述するスケ-リング理論は光に対しても適用が可能で、1次元、2次元系ではわずかな乱れによっても光は局在し、3次元系で光を局在させるには散乱の平均自由行程が光の波長と同程度になるというヨッフェ・レ-ゲルの条件が必要となる。光の場合、高い屈折率を持った物質が存在しないこと、光波のベクトル性などから強い散乱を作る上での制限があり、アンダ-ソン局在を実現させることは困難が多い。酸化チタン微粒子を不規則に分散させた系などが局在を実現させる系の候補と考えられている。一方、誘電率の異なった媒質を光の波長オ-ダ-で周期的に並べた場合、光があらゆる方向に伝播できない光のバンドギャップが現れる。このような系に、局所的に誘電率が高い、もしくは低い欠陥部分を作ると光の束縛状態が作られる。これは、電子のバンドギャップ中のドナ-、アクセプタ-準位に対応する。光の局在状態を作り出す系の中で起こる自然放出、非線型光学、光のトンネル現象など新しい光学現象が興味を持たれている。

(物性科学事典1996年(東京書籍)より抜粋:冨田執筆)

・“光のアンダーソン局在の新しい展開” 冨田誠, 
光学
, 34 424-430.(2010). (総説)

・“不透明物質をくぐり抜ける光”  Johanna Miller, 冨田誠、2, 18-20
パリティ (2009).
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