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2.微小球共振器 

微小球共振器にウイスパリング・ギャラリー・モード(囁きの回廊)

超光速度の波束の伝播はさまざまな系で観測されている。研究室では、誘電体微小球共振器に現れる「速い光」、「遅い光」を実現してきた。真球度の極めて高いガラスの微小球(直径、数10μm)は表面近傍を周回するモード(ウイスパリング・ギャラリー・モード)に光を強く閉じ込め、~109という優れた共振器として働く。この共鳴に伴った急峻な分散は波束の伝播制御にも適したものである。モードは、動径、周回、方位方向の3つの指数と偏光状態によって指定される。これらの指標は、水素原子の電子状態を指定する量子数と類似している。

図2-1 ウイスパリング・ギャラリー・モード(囁きの回廊)

注)囁きの回廊:円形の部屋の中で、壁際で囁いた声は反対側にいる人によく聞こえる。音波が壁面に沿って伝播するためである。この伝播モードはウイスパリング・ギャラリー・モードとばれる

図結合共振器誘導透明化

微小球共振器の例を図2に示す.直列に連結された第1球(S)と第2球(S)がテーパーファイバーに近接場によって結合されている。初めに、Sを取り除いて,単一の微小球のみによる光学応答を考えよう。入射光の周波数が特定のモードに共鳴したときファイバーから球へ光が落ち込み、吸収が現れる。球内部の損失に比べてSと外部光との結合が弱い条件(under coupling条件)下では、透過した出力パルスの位相シフトは周波数の増加に伴って減少し,共鳴周波数近傍で異常分散が現れる。原子系では、誘導分極によって作られる原子からの2次的な波成分が異常分散を作るが、微小球では球を周回した2次的な波成分が異常分散を作り出す。また、光との相互作用の強さはSとファイバーの距離によって制御される。微小球では、60nsのパルスを用いて-8nsの負の時間遅延が作られている。

 

図2-2 結合微小球共振器の概念図

次に、図2-2において第2の微小球(S)を第1の微小球(S)に近づけ近接場結合すると、Sによってスペクトル幅の広い共鳴吸収ディップの中にS2kによって誘起される幅の狭い透明化窓が現れる。この現象は、結合共振器誘起透明化(Coupled Resonator Induced Transparency=CRIT)と称される。特に、透明化した窓では、入射波形がほとんど減衰することもなく、波形を変えることなく8.5ns遅延している。これは、原子系でのEITに現れる遅い光を、全光学系(フォトニック原子)で実現したものといえる。原子系では利用可能な周波数は原子の固有遷移に制限されるが、微小球系では球径の調整で自由に設定できる。多段に結合共振器を配列することによってパルス遅延を大きくすることができる。また、Sの光の閉じ込め時間よりも高速でSとSの結合を開閉することで光の凍結を結合共振器で実現する可能性も提案されている。

図2-3 結合微小球共振器における誘導透明化(左Bの位置)と遅い光の実験結果(右Bのパルス波形)

参考

Physical Review Letters 98, 213904 (2007).

“結合微小球共振器にあらわれる遅い光と速い光” レーザー研究, 37 585-590.(2009). (解説)

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