要旨
「宇宙はどのようにはじまったか」、「宇宙はなにから成るのか」、
「私たちはなぜ3次元に住んでいるのか(上下、前後、左右に動けるのか)」
といった疑問を抱かれたことはないでしょうか。現代のビッグバン宇宙論に
よると過去に宇宙は小さくて熱かったのですが、そこでは物質は素粒子に
分解されます。素粒子の最先端理論である超弦理論においては、クォーク、
電子、ニュートリノ、ゲージ粒子、重力子などの様々な素粒子を1種類の
弦(ひも)の異なる振動状態とみなします。ひもは非常に小さいために
現在の実験では粒子に見えます。こうして超弦理論は重力を含むすべての
力と物質を統一することができ、宇宙のはじまりと成りたちを解明できる
と期待されます。この講演では、超弦理論によって上記の疑問に答えること
を目指した研究についてお話します。
Q&A
Q. 行列模型はプランクの長さで使える理論だが、それよりも長いスケールではどう対応するのか?
A. 行列模型から場の量子論が出れば、それよりも長いスケールも扱えることになります。
Q. 行列模型から膨張する3次元空間を得る計算はどうやって行っているのか?
A. 行列模型に対する量子論をコンピューター上でモンテカルロ法を用いて(サイコロを振って)、計算しています。
Q. 膨張する3次元空間が出現する図の時間と空間の単位は何か?
A. 実験結果を説明するために、1つのスケールをインプットすると具体的に決まりますが、まだ決まっていません。(将来的には決める予定です。また、残りの空間6次元の広がりがプランクの長さ程度になると予想しています。)
Q. 時空の不確定性や非可換空間はいつ頃考えられたのか?
A. 時空の不確定性が初めに考えられたのは1987年頃です。非可換空間は1940年代から考えられていましたが、弦理論の第2革命期(90年代半~)以降に非可換空間と弦理論の関係が議論され、時空の不確定性も注目を浴びるようになりました。
Q. 時間の数は決まっているのか?
A. 時間が2つ以上ある理論を考えている人もいます。そのような理論を考えることもできますが、行列模型では超対称性から時間が1つであることが自然になっています。また、時間の数が予言できる理論もあるかもしれません。