概要
遷移金属錯体を触媒に用いた有機化合物の合成反応および化学変換反応について研究をおこなっています。
新規機能をもつ錯体を独自に設計し、これまでに例のない新しい触媒反応の開発および既存の触媒反応の効率化を目指しています。また、環境負荷を低減することができる高原子効率反応についても研究をおこなっています。
研究テーマ
新規二核錯体の設計と触媒反応への応用
遷移金属錯体による触媒反応は、現在では精密有機合成において重要な位置を占めているが、そのほとんどは単核触媒を触媒として用いており反応は単独の金属中心で進行する。これに対し、二核錯体を触媒として用いた場合には、二つの金属の恊働作用により単核錯体では実現不可能な特異な化学変換が期待できる。これまでにも数多くの遷移金属二核錯体が合成されてきたが、触媒反応において特徴的な機能を示す例はごくわずかである。
本研究室では、単核錯体触媒では実現不可能な新規触媒反応の開発を目指し、新規二核錯体の合成およびその触媒能の評価を行っている。二つの金属が協奏的に働く二核錯体構築のためには新たな配位子の設計が必要であり、これまでにアミジンやピリダジンを中心骨格とする配位子を合成している。これらを用いて合成された二核錯体は常に二つの金属が近傍に位置しておりその恊働作用が期待される。
炭素ー水素結合の直接官能基化反応
持続可能な社会の構築において、廃棄物の少ない環境への負荷が低い反応が求められている。しかし、多くの有機合成反応ではハロゲン化あるいはメタル化された有機化合物が用いられており、これらから大量の塩(無機あるいは有機)が副生し不用物として廃棄されている。もし、ハロゲン化やメタル化していない有機化合物を直接活性化し反応に用いることができれば、廃棄物を減らすことができる。遷移金属錯体は有機化合物の様々なC–H結合を直接活性化することが知られており、近年、それらを触媒に用いたC–H結合官能基化反応が盛んに研究されている。
本研究室では、上記の二核錯体等を用い様々なC-H結合(芳香環、アルケン、アルキン等)の官能基化反応について研究をおこなっている。