認知モデル

認知モデルを主要なコンセプトとしています。残念ながらこの言葉は日本語として一般的ではありません*1。森田の考えと適合するの定義として、英語版Wikipediaの翻訳を示します (https://en.wikipedia.org/wiki/Cognitive_model)。


  • 認知モデルは動物(主に人間)の認知プロセスを近似するものである。この近似は、理解と予測を目的としている。認知モデルは認知アーキテクチャを使っても使わなくても作ることができる。
  • 認知アーキテクチャと異なり、認知モデルは単一の認知プロセス、もしくはプロセス間のインタラクション、特定の課題やツールに対する行動の予測に焦点をあてる。
  • 認知アーキテクチャは、モデル化するシステムの構造的側面に焦点をあてる。アーキテクチャは、認知モデル構築における制約を提供する。同じようにモデル構築を積み重ねることで、アーキテクチャの限界や不足が明らかになる。最も人気のあるアーキテクチャには、ACT-RやSoarが含まれる。

誤解されがですが、(少なくとも情報学の文脈で)認知モデルは、言語や図で表現されたモデルではなく、コンピュータに実装されたソフトウエアを指します。人工知能と言い換えてもいいですが、人工知能という言葉はもっと広い対象に対して使われています*2。認知モデルはあくまで、「人間の知性を理解するため模型」であることに特徴があります。認知モデラーとして、人間を超える知能を目指すのではなく、人間のように限定合理的*3に振る舞うソフトウエアの構築を目指しています。
*1 そもそも認知 (Cognition) という言葉が誤解の多い言葉です。法律用語で使われたり、ひどいときには疾患の方そのものを表現する使われ方をしたりしています。ここでは人間の脳の中で行われている情報処理一般を指しています。
*2  人工知能という言葉はバズワード化が顕著ですね。少し使いづらい言葉になってしまいました。
*3 社会科学一般で使われるようになった「限定合理性」という概念も元々は認知モデル研究の文脈においてH. Simonによって提唱されたものです。