【特別講演】キャッシュレスの推進について
経済産業省 商務・サービスグループキャッシュレス推進室長 伊藤政道氏
世界各国のキャッシュレス決済比較は40%〜60%であるのに対し、国内キャッシュレス比率は24.1 %である。2025年6月の大阪万博までにキャッシュレス決済比率を四割程度にすることを目指す「成長戦略フォローアップ」を令和元年6月21日に閣議決定した。
キャッシュレス決済は、事業者の生産性向上につながるほか、消費者に利便性をもたらす。レジ締め作業の時間は一日平均25分かかっている。このようなコストを減らすことができる。
現金取り扱いコストを、現金を発行するところから計算すると1.6兆円を超える直接コストが発生している。 キャッシュレスによって、これらのコストがかからなくなるのではないかという報告もある。
訪日外国人の約七割が、クレジットカードが利用できたらもっと多くお金を使っただろうと答えている。一方で、日本のキャッシュレス推進に係る課題は多くある。端末負担コスト、ネットワーク接続料など、店舗にキャッシュレスを導入する際に必要なコストは、フルセットで10万円以上かかることもある。浪費しそう、お金の感覚が麻痺しそうという消費者の不安もある。
キャッシュレスの事業者に払う手数料がかなり高いという問題もある。そこで、キャッシュレス・消費者還元事業の制度が2019年10月から実施される。参加した一般の中小企業・小規模事業者は、消費者還元5%、加盟店手数料は3.25%以下で、更に国が1/3を補助。中小企業の負担ゼロで端末導入。1/3を決済事業者、残り2/3を国が補助。フランチャイズ等の場合は、消費者還元2%。キャッシュレス事業者200社以上が今週時点で参加しようとしている。もとは消費税対策であるため、訪日外国人向けのキャッシュレスは対象ではない。
キャッシュレスを促進させた取り組みとして、スウェーデンでは、金融機関が共同でやっているSwishというサービスがある。7割程度が利用していて、主に個人間送金として利用されている。韓国では、クレジットカード年間利用額の20%所得控除や店舗でのクレジットカード取り扱い義務付け、お釣りをキャッシュレスでもらうなどの取り組みがある。中国では、アリペイ、We Chat Pay、銀聯などが大手である。アリペイを例に上げると、様々なサービスとの連携ができている。現金を、キャッシュレスに変えると、決済だけではなくて前後の物流などがセットのUIになって、新たなサービスが出てくる。
海外ではAmazon go(米)/Fresh Hema(中国)があるが、日本国内でもキャッシュレス事例が広まりつつある。スーパーセンタートライアルアイランドシティ店は、カメラを使い顧客の行動を解析することで、商品の見つけやすさの改善や欠品の防止に役立てている。完全キャッシュレス店舗のカスミストア(筑波大学店)は、セルフレジが9台あり、レジ締め時間が短縮された。都市だけではなく地方でもキャッシュレスが行われている。飛騨市のさるぼぼコインや、ほか釜石市、福岡市、金沢市などでも取り組まれている。その他、日本十の都市で取り組まれている事例を紹介。
QRコードの標準化はJPQRで実現する。静的、動的、店舗提示型、利用者提示型のそれぞれの組み合わせで標準化を行った。
キャッシュレス推進協議会と予定を紹介。
これから推進協議会が行うこととして、キャッシュレスの教育と体験の提供や、自治体・医療機関におけるキャッシュレス普及促進など。また、災害時に強いキャッシュレスのありかたなどを検討。キャッシュレスが普及できない壁が存在する。それを壊していくというのが政府の取り組み。