投稿者:長谷川 隆義(昭和46年理学部生物科卒)
理学部を卒業したのち出版社に勤めていた私は退職後、「Super Nova」という編集工房を立ち上げ、宇宙論や地震・火山活動など、科学に基礎を置いた原稿を書き続けてきました。その間、私のモチベーションを高めてくれたのは、「ミクロとマクロはどこでつながっているの」など、ふと湧いた「なぜ?」を、どう突き詰めていくかということでした。
宇宙論の第一人者・佐藤勝彦教授の最終講義をまとめた『宇宙137億年の歴史』は、宇宙の仕組みを素粒子で解き明かすという話です。超ミクロな”時空”がインフレーションを起こし、ビッグバンを経てマクロな世界=宇宙を作り上げていくというダイナミズムに満ちた話となりました。ミクロとマクロが、「宇宙創生のシナリオ」を支えていたのです。
それはまた、『ニュートリノと宇宙創生の謎』という本の構想にもつながっていきました。宇宙開闢の解明は、ニュートリノやヒッグス粒子が鍵を握っているという、現代宇宙論の最先端を切り開く話で、この分野では理論・実験の両面で日本の素粒子物理学者たちが世界を牽引しています。
また、こんな疑問もあります。専門家の多くは、大地震のあとの噴火については両者に関係があるとしながらも、先だって起きた噴火とその後の大地震は無関係だとしています。同じ地球物理の話なのに、後者を認めないのはおかしい。富士山噴火の歴史を見ても、貞観大噴火(864年)の5年後に貞観地震、安政噴火は東海・東南海・南海3連動型大地震と同時に起きています。その「なぜ?」という疑問を考える過程で『超巨大地震は連鎖する』という本が出来上がりました。この本はまた、確率論を用いた”地震動予測”には問題があり、地震を予測する上で有効な、新たな手法について触れています。このように「なぜ?」を突き詰めることから湧いてくるさまざまなアイディアはとても貴重なものでした。