投稿者: 加藤 国雄(昭和49年 理学部地学履修コース卒)
静岡県の東部には多数の火山があり、中部・西部の大部分は堆積岩から構成されている。さらに西側の県境付近には変成岩も分布しています。これほど様々な姿を見せる静岡県の地形・地質は、全体が野外博物館とさえ思えます。換言すれば、多様性に富む自然環境の宝庫である。しかし、私だけかもしれないが、最近気になっていることがあります。それは、長い年月の間に自然環境が変化して本来の姿が見えなくなっているのではないかという事です。
静岡県を離れて全国、さらに海外で活躍されている同窓生も多い中、私は高校の理科教員として県内に住み続けてきました。地学を担当する機会はほとんどありませんでしたが、自分が子供の頃から持っていた地学に対する興味関心を失いたくないと考えてきました。定年を過ぎた今、野外を歩いてみると、かつては容易に採取できた化石が滅多に見当たりません。きれいに見えたはずの地層が、植物やセメントの吹きつけに覆われて見えません。常にこのような環境の変化を把握し、貴重な自然環境を後世に伝えていくことは、私たち世代の役割と思います。世界遺産や日本ジオパークのように顕著なものでなくとも、意外と身近なところに貴重な自然があるのではないでしょうか。
失われつつある露頭の一例として、褶曲した地層(浜松市北区)の写真を掲載します。7年前に撮影したもので、現在はこれほど鮮明に見ることができません。写真などの記録に残さなければ、今後は誰にも気付かれないかもしれません。
記録を残す為には、自然環境を理解することが何よりも大切です。人にとって、それほど自然は奥が深いと思います。漫画家・手塚治虫の「自然こそ最高の教師」という言葉もあります。私自身が「身近にある静岡の貴重な自然について、今後はさらに理解を深めたい」と思う今日この頃です。