第8回 EBSDの定義ファイルの追加

その場FE-SEM (JSM-7001)に組み込まれているEBSDで結晶方位マップを作成する際には結晶の情報が必要になります。いくつかの結晶についてはシステムがあらかじめ用意していますが、あまり一般的でない結晶などはユーザー自分で定義する必要があります。この定義のときに必要な情報をまとめておきますので、ご参考ください。

必要な事項

1.空間群番号

例えば、ヘルマンモーガン記号で言うP63/mmcに対応した194などです。230以下の正の整数になります。

2.晶系

Hexagonalといったまさに晶系です。

3.格子についてのパラメーター

単位格子の格子ベクトルの長さとベクトル間の角度です。前者はa, b, c, 後者はα, β, γなどとしてデータベースなどで示されています。

4.格子内の原子位置

各原子の格子内での位置が3つの座標で示されたものです。

 

例えばBoron Nitride(外部サイト)であれば上記1~4は次のようになります。

  1. 194
  2. Hexagonal
  3. a=b=2.512 Å, c=7.707 Å, α=β=90°, γ=120°
  4. ホウ素についてa:0.3333, b:0.6667, c:0.25およびa:0.6667, b:0.3333, c:0.75、炭素についてa:0.6667, b:0.3333, c:0.75およびa:0.3333, b:0.6667, c:0.25

これをもってきていただければ、スムーズに結晶情報が登録できます。

 

ここから下は実機が無いと無意味ですが備忘録として手順をざっくりと記載しておきます。

①PhaseタブからNew:Atomsボタンを押す

②Search窓に1の空間群番号を入力してSearch!ボタンを押す。すると番号に対応したヘルマンモーガン記号や点群記号が示されるので欲しい結晶の情報であることを確認する。

③次へを選択する。

④NameやFormulaは表示に使われるものなので物質がわかるように入力してOK。格子定数は上記3の情報をそっくり入力する。

⑤次へを選択する。

⑥格子内の各原子の位置を入力する。まずAddボタンをおす。周期表上から登録したい原子の元素記号を選択する。上記4の位置を入力する。追加すると結晶モデルの中に指定した位置に原子が表示される。もし追加しても表示される原子が増えていないようであれば、それは結晶の対象性から先に登録した原子位置と重複する位置という意味になるので、Removeを押して削除しておく。全ての原子位置を登録したら次へを押す。

⑦Maximun HKL valueはデフォルトでは9が入っている。そのままでもOKですし、取扱説明書には5~7でも十分となっている。加速電圧は使用する加速電圧を入力しておく(デフォルトで20kV)。

⑧次へを押すとファイル名を聞いてくるので、適当なファイル名をつけて保存する。

以上です。