『滝口入道』を聴く~高山樗牛入門~ @観富山龍華寺 企画について

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『滝口入道』を聴く~高山樗牛入門~ @観富山龍華寺 企画について

この事業は、平成30年度「静岡大学 地域連携応援プロジェクト」 の助成を受けて行われます。申請時の「事業名」は「音楽と朗読による地域遺産の継承」と言うものでした。申請書の内容に触れながら、すこし説明します。

私は、静岡大学の教員として、様々な形で静岡の歴史や文化に関わる人たちと繋がっています。そのなかで、ゆかりの伝説や人物について、広く知らせる活動を手伝って欲しいという要望を頂くことが多くあります。その場合、歴史学や文学研究の作法に従って調査し、授業で扱う、或いは講演会や展示会を行う、と言うのが通常の流れで、これまで何度も行ってきました。しかし、このやり方では、殆どの場合、その時限りであり、催しの来場者も高齢者が多くを占め、次の世代に引き継いで行く力が弱い、という課題が、いつも頭の隅にあり続けています。

そういう現状認識に基づいて、地域に残る歴史文化遺産を若い人達に伝え、次の世代に継承していくことを目的とし、その手段として、演劇や音楽に関わる人達の協力を仰ぎつつ、学生たちが朗読や演奏を行うことで、世代を超えた地域交流と、学びあえる空間を提供する仕掛をつくろう、というのが、この事業です。
ここまで読んで頂ければ判るように、これは、静岡県立大学の細川先生鈴木先生が既に実践されていることの二番煎じでもあるのですが、一つの課題にじっくり深く関わると言うより、小規模に始めて、様々な場所でそれぞれに継続的に動かしていけるような形で定着させようと言うところが、すこしだけ、違うところです。

具体的には、地域に残る文化遺産に関わる話を掘り起こし、テキストを作り、学生たちが、ゆかりの場所で朗読会・演奏会を開催する。その過程で、地域で朗読・演奏活動をしている俳優、音楽家たちの協力を仰ぐ、と言うようなことを拡げていこうというわけです。
こうした活動によって、これまでは歴史講座などに参加していなかった若い人達にも親しみやすく「ものがたり」や「うた」を伝えることが出来、これによって、従来参加していた地域の高齢者と学生、子供を含む若年層との交流も期待できます。また、それぞれ、所縁の寺などで開催することによって、地域共同体の核としての寺社・教会等の存在意義を再認識し、交流の場として、一層の活用を促したいとも考えています。

既に協力依頼や講座開催例が複数あり、「歌」も含め、準備を進めている物もあるのですが、それは別の機会に告知するとして、今年度は、まず龍華寺さんで「滝口入道」朗読会+講座を行おう、というのが今回の企画、『滝口入道』を聴く~高山樗牛入門~です。

今回の企画の目的は、観富山という号の通り、古来の富士山ビューポイントであり天然記念物の蘇鉄やサボテンも有名な観光スポットでもある龍華寺さんにある高山樗牛の墓碑、及び、関連資料に親しみを持ち、理解して頂くことにあります。
現在では殆ど知られることの無い高山樗牛は、明治中期には若き文豪として知られていました。そして、樗牛唯一の小説作品である『滝口入道』は多くの人に影響を与えています。しかし、擬古文で書かれているため、現代人には、とても読みづらい文章になってしまいました。そして、読まれないまま、よく解らないけど悲恋物語らしい、程度の情報が流通する、残念な状態になっています。
この、読まれざる古典の魅力は、音読することでこそ伝わる要素のとても大きいものです。そこで、今回は、有志の学生たちが、SPACの俳優であり、静岡で「歴史演談」*と言う、朗読と講釈の会を継続して行っている奥野晃士さんから直接ご指導頂き朗読に挑戦。解説は私が行う、と言う形式を取ります。プロが朗読した方が、素晴らしい朗読講座になるのは明白ですが、こうして、技術や考え方を伝授し、更に地域の人たちが参加出来る形で伝えていくことの意義を重視しています。
実際、学生たちと、奥野さん、私とで行った「特訓」では、役者としての身体感覚や表現方法の問題と、文学研究の側からの作品へのアプローチとが混ざり合い、相互作用によって学生たちの表現が変化していく体験をすることが出来ました。非公開で行ったのが申し訳ないような、楽しく、豊かな時間を共有できました。


今後は、こうした練習も、ワークショップのような形で公開する企画の可能性も探ってみようと思っています。

というわけで、プロの役者さんの朗読会ではありませんが、とても優秀で、吸収力のある学生たちが、とても難しい『滝口入道』の朗読に挑みます。長い作品なので、今回は最初と最後のわずかだけですが、今後に繋がるような会にしたいと考えています。

皆様のご来場をお待ちしています。

静岡大学人文社会科学部 教授 小二田誠二

奥野さんの「歴史演談」近々の告知がこちらに。