ブラックホール熱力学の研究

1970年代のBekensteinやHawkingらの研究によって、ブラックホールは熱力学的な性質を持ち、次のような温度を持つことが予言されました。

\begin{align}
T=\frac{h c^3}{16\pi^2 GMk}
\end{align}

ここで$c$は光速、$k$はボルツマン定数、$G$はニュートン定数、$h$はプランク定数で、$M$はブラックホールの質量です。
温度は空気やお湯も持っているのでブラックホールが温度を持つことは特に不思議で無いかもしれませんが、実は非常に大きな意味があります。 空気が温度を持つのは、空気が分子から出来ているためです。そして分子の集団運動を統計力学で解くことにより、空気の熱力学的な性質や温度を理解することが出来ます。
一方、ブラックホールの場合は、重力の微視的な性質が良くわからないため、どのようにこの温度や熱力学を説明して良いのかわかっていません。逆に言えばブラックホールの熱力学的な性質が理解できれば、重力理論における「分子の発見」に相当する重要な進展が期待できます。

私達は最近、電荷を持ったブラックホールの熱力学的性質が「BPS粒子」と呼ばれる粒子の集団運動で定性的に説明できることを示しました。 そのためこのBPS粒子が重力理論における分子の役割を果たすのではないかと期待しています。現在この仮説を証明するためにさらに研究を進めているところです。

参考文献

Takeshi Morita, Shotaro Shiba, Toby Wiseman, Benjamin Withers
Class.Quant.Grav. 31 (2014) 085001 学術論文へのリンク

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