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本学の令和元年度卒業式の中止を2月28日に決定し、同日付で関係者の皆様にお伝えしました。大学・大学院の卒業・修了という人生の重要な節目となる出来事を友人・後輩・保護者等お互いに支え合い、励ましあってきた人々と共に祝いたいという皆さんのお気持ちを思うと、今回の決定は私としてもたいへん残念でなりません。私だけでなく、静岡大学の全教職員にとっても晴れの日を迎え、未来への希望に満ちた皆さんの幸せな笑顔を見ることは最高の喜びの一つであり、毎年心から楽しみにしている瞬間ですので、今回その機会を失うことは大きな悲しみです。

2月25日以降、政府の各レベルから出されているコロナウィルス蔓延抑制に向けた各種の要請に対して批判的見解を持つ方々がいらっしゃることは事実ですし、その有効性についての国会をはじめとする公開の場での議論が事後的な検証も含めて今後重要な意味を持つことは確かです。しかし国内においても小規模とはいえ、いわゆる「市中感染」が拡がりつつある今、本学の卒業式のような帰省中・卒業旅行中の学生諸君や保護者の皆さまをはじめとする非常に広範な地域からの少なくとも1000人を超える多数の参加者が席を並べるイベントを開催することが感染リスクを相当高めることは否定できません。この点で地域的に限られた範囲からの比較的少数の参加者からなる高等学校までの卒業式の運営とは大きな違いがあると考えています。

2009年4月以降メキシコを起点として世界的に流行した新型インフルエンザの場合、5月末に静岡市で初めて感染者が確認されたほぼ1ヶ月後に静大生の初めての感染者が確認され、8月以降の本格的流行への転化を経て、全国的に流行のピークとなった年末には全学で累積約700名の学生が罹患しました。次の年の3月には流行期が終わって終息宣言が出されることとなりましたが、大学としてもかなり長期に渡る対応が必要となりました。有効な抗ウィルス薬が存在したことなど今回のコロナウィルスの流行とは異なる面も多くありますが、最終的には全国で推計罹患者数が2000万人に達し、200人を超える方の命を奪った前例を考えると、まだ今回の流行はきわめて初期の段階にあり、今後急速に拡大する可能性もあると判断せざるを得ません。「単なる風邪に何を大騒ぎするのか」という反応が最終的には正しくなることを私自身も心から祈りたいとは思いますが、現時点ではやや楽観的に過ぎると言わざるを得ません。

今回の中止決定が、式典用の衣装の準備や卒業式の開催を前提とした下宿先との契約等、個々の学生の皆さんにとっての経済的不利益につながるケースも多いという指摘も受けています。私としてもこの点については誠に心苦しく思いますが、このことを理由として、卒業式に参加する皆さんを健康上の大きなリスクにさらすことは、大学の運営にあたるものとしてとても責任ある態度とは言えないと考えています。是非大局的に見て今回の大学の決定が決して軽はずみで非合理なものではないことをご理解いただきたいと思います。