遠山研究室では認知科学(特に協調学習)を基盤としたうえで,学習・ICT活用・熟達化に関わる幅広い研究を行っています.協調学習とは,いわゆる話し合いによる学習ですが,本研究室では特に,学習を深めるための話し合いに焦点化しています.主なテーマは以下の通りです.
プログラミング教育の実践研究
2020年度から使用されている小学校学習指導要領には,プログラミングを用いた学習が例示されています.中学校技術科でのプログラミングも以前より充実しましたし,2022年度からは全ての高校でプログラミングを含む「情報Ⅰ」が必履修化されたように,全ての学校段階でプログラミングや情報に関する学習の重みは増しています.プログラミングでは様々なことができますので,プログラミングを用いて算数などの教科内容を学習するのか,プログラミング技術そのものを学ぶのかによって,設定すべき学習目標や設計すべき学習活動は変わります.また,学習目標に合わせた評価方法も用意する必要があります.本研究室では,学習者がプログラミングを通じて何を学んだのか,何ができるようになったのかを学習者中心の視点で検討する認知科学的手法を用いながら,プログラミング教育の実践的な研究を行っています.本研究室の主要トピックは以下の通りです.
- 協調学習はプログラミング活動をいかに支援するか
- 協調学習はComputational Thinkingの発揮を促すのか
- Computational Thinkingはプログラミング学習によって育成されるのか
- メタ認知はプログラミング学習をいかに促すのか
ICTを活用した「機能的学習環境」を実現するための研究
近年ではGIGAスクール構想等の施策もあり,ICTを活用した学習が注目されるようになりました.一方でコンピュータは学びを促すための道具として,1980年代頃から活用が進められてきた実態もあります.本研究室では,コンピュータを活用した教育に関する認知科学的な先行研究を踏まえたうえで,現代のICTを活用して「機能的学習環境」を構築するための実践研究を行っています.機能的学習環境とは,人がよりよく学ぶことを促すために整えられた場を指すもので,故・三宅なほみ先生が提唱された考え方です.人の賢さを引き出してさらに伸ばしていくためにはICTをどのように位置づけたらよいのか,という立場となります.この際,ICTのユーザビリティ(使いやすさ)についても検討を行います.本研究室の主要トピックは以下の通りです.
- ICTを活用した「小さな研究室」での探究的学習活動経験はいかにその後の学習へ転移するか
- 「小さな研究室」は戸塚滝登先生のご実践です
- 学びを深めるためのICT活用において協調学習はいかに位置付けられるか
- 物理環境と仮想環境では問題解決過程に違いが生じるか
熟達化研究
人が何かをできるようになること,つまり熟達化には長い時間がかかります.また,何かができるようになるまでの過程で起こることや所要時間は人によって多様です.上手な人の動作を真似してできるようになる場合もあれば,自分の中で身体イメージを作ることや,仲間と話し合いながら練習することでうまくいく場合もあります.フィードバックをどのように受けるべきかについても様々な研究がなされています.このうち本研究室では,逆上がりや野球などの身体動作を伴う熟達だけでなく,麻雀のような問題解決における熟達も対象とした研究を行っています.研究方法としては,発話分析やOpenPose,MediaPipeの解析結果などを組み合わせて,認知的な変化を最大限捉えられるよう工夫しています.本研究室の主要トピックは以下の通りです.
- 鉄棒の逆上がりができるようになる過程で身体動作と発話にはどのような変化が見られるか
- センサによる身体動作の数値的フィードバックは野球のバッティングスキル育成にどのように寄与するか
- 麻雀のような不完全情報ゲームにおける熟達度はどのような認知的特徴として表れるか
※スポーツなどの身体動作の熟達化研究に取り組む場合,研究室配属前から参加しているスポーツサークル等があることが好ましいです.そうでない場合,標準年数を超えて研究に取り組んでいただく可能性があります.