川本 竜彦

海水とマントルの反応を研究しています。

 日本列島の下に沈み込むプレートを作る岩石は海水によって水和されます。鉱物中の水は温度が上がると徐々に脱水し、塩水がプレート境界に出ます。その塩水は地下 30km で地震を起こし、60km で有馬型温泉のもととなり、100km でマグマのもとになります。この描像は、「偶然」マントルの岩石中に塩水包有物を発見したことに始まり、ハロゲン元素比、硫酸塩や陽イオンの存在比などから、海水起源の塩水と考えるようになりました。現在、プレートテクトニクスにより地球内部に運ばれる海水が、地震、温泉、火山などを引き起こす際の効果を理解したいと思っています。大きな問題は、海水と岩石の相互作用で海水はどう組成を変えるだろうか、また、海水の化学組成は地球史を通してどのように変化して来たのかを知りたいと考えます。さらには、海水とマントル岩の反応によって海水中の二酸化炭素を固定する過程を解明できれば、地球温暖化の解決に貢献できるのではないかと考えています。

・これまでの研究の結果
 私は、大学生のころから30年以上研究してきました。その中で提案した重要な仮説は以下のものだと考えます。

沈み込み帯のマグマの化学組成を説明するためには、沈み込む海洋プレートからマントルに加わる流体は海水に似た塩水である。(2013年)

沈み込み帯のマグマは、沈み込む海洋プレートからのシリカに富む超臨界流体が高Mg安山岩と水に分離することで生成される。水はマントルを部分融解して玄武岩マグマを作る。(2012年)

沈み込み帯の玄武岩マグマは水に飽和していて、地殻中では6%を超える高含水量をもつ。(2010年)

マントルに存在する水流体に溶け込むケイ酸塩成分は圧力とともにマグネシウムに富む。同様に、圧力が高くなるにつれて含水マントルの融解でできるマグマもマグネシウムに富む。(2004年)

初期地球にはマグマオーシャンから結晶化した含水鉱物からなるマントル遷移層が存在し、それが上昇する際に融解しコマチアイトマグマができた。プレートの 沈み込みで大量の水を250kmよりも深いところにもっていけない。そのため、プレートの沈み込みによって、遷移層が再び含水化するはなかった。(1996年)

安山岩ーデイサイトー流紋岩マグマは含水玄武岩質マグマの結晶分化または部分融解で作られる。玄武岩は含水マントルカンラン岩の部分融解で作られ、高マグネシウム安山岩は低温低圧条件でのみ作られる。(1995年)

世界中の火山岩にほぼ普遍的に見られる塵状包有物を持つ斜長石と共存する蜂の巣状組織の斜長石はマグマの過冷却によって形成される。(1992年)

・研究するために必要なこと
 研究の醍醐味とは、突き詰めると、自分にしかできないテーマを追求できるところです。そのためには、知識や技術や知恵が必要で、研究者はそれを日々得ようとしています。実際になにが必要か列挙してみます。

英語。 自然科学は世界中で同時に進歩しています。そのため、日常的に英語で論文を読み書きすることが必要です。

論理。 私の研究は算数の知識でなんとかなりますが、論理的に考えることが不可欠です。ただし、たまには、論理を無視することも重要と感じます。

根気。 注意深い高校生なら実験もできるし、観察もできます。ただ、「その実験や、観察がどのくらい重要か」は高校生に理解できないので、実験や観察が思い通りに 行かない時に違いがでます。私がやりたい実験はほとんど失敗の連続ですが、「大事な実験」だと理解しているので、簡単には諦めません。手を替え、品を替え、 しつこく追い続けます。

抽象化。 自然現象は複雑です。その中で「なにがわかることが重要か」考え続けることで、自分が解く研究テーマを探します。また、それを解くための技術を習得します。

偶然に対する備え。真実の女神に後ろ髪はないようです。偶然その姿が表れたとき、すぐに手をとらないと逃げられてしまいます。そのために常に準備しておくことが重要です。

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