脳トレの開発者として有名な川島先生が書かれた「スマホが学習を破壊する」を読んだ。「脳はマルチタスク対応ではない」にはホッとさせられた。これまで自分がマルチタスクをやろうとするとどれも思うように進まないので、いつも一つだけに集中するシングルタスクしかやってこなかったからだ。一つの問題に取り組んでいってここが解けたら先に進めることが分かったら、次にその問題を先に解こうとそれだけに集中する。これを繰り返して複雑そうに見えた問題の答えを自分なりに見つけていく。自分だけがマルチタスクができないわけではなかった。
もっと驚いたデータは、家での学習時間が30分未満で、スマホを全く使わない中学生の数学の成績の平均点が、2時間以上学習しているけれど3時間程度スマホもやっている学生のそれよりよい、というもの。学習でせっかくつないだパターンを、スマホをいじることで崩してしまって元の状態に戻っているという点だ。特に、ゲーム、ライン、動画など、マルチタスクをするほど影響が大きいとのこと。スマホを一日一時間以上やると時間が増えるに従って成績が落ちている。
医療では、治療法が複数あるときオプションAとBのいい点と悪い点を並べて、それらの統計データを患者に示して、患者が治療法を選択できるようになってきているらしい。スマホを使うことにそのような負の側面があることが分かった今、スマホを販売するメーカーは「XXができます」というのと合わせて、一日これだけ使うと学習への影響は平均的にはこうなりますということを知らせる義務を負うことになるだろう。こういう使い方なら学習にも効果的だ、のようなポジティブなものの開発にもつなげてほしい。
パソコンで文を書いても前頭前野は活性化されないそうなので、スマホをあまり使わない人も注意が必要。どんな漢字だったか考えながら手で字を書くと活性化することから、脳によいマルチタスクは脳1+脳2ではなくて、脳+体ということのようだ。早速、講義の資料はできる限り手で書くことにした。0(ゼロ)のつもりで書いた記号をθ(シータ)と読ませてしまった学生や1.01mAを1001mAとして計算させてしまった学生がいたので反省。どちらも計算自体は正しいのでもちろん〇でした。「ワープロで書いてよ」と言われない程度にまで丁寧に書くようにします。
戻る