私たちの身の回りには、接着技術を利用して作られる製品が数多くあります。木造建築物に使われている様々な建築材料の製造、木質資源のリサイクルや未利用資源の有効利用には接着剤が欠かせません。わたしたちの研究室は、様々な接着剤の性質に関する基礎研究のほか、化学物質を放散しない接着剤、耐久性のある接着剤、難接着木材用接着剤の研究開発を行っています。また接着技術を応用した振動吸収性建材、未利用資源を有効利用した新規材料の開発も行っています。

相分離現象を利用した高性能接着剤の開発 ユリア樹脂およびフェノール樹脂の合成 示差走査熱量測定(DSC)による接着剤のガラス転移点(Tg)の分析
液滴の接触角測定によるマカンバ(Betula maximowicziana)の表面張力解析 高性能エマルジョン形接着剤

【1】環境対策型接着剤の開発
ホルムアルデヒドや有機溶剤などの化学物質を放出しない接着剤が消費者から求められています。生分解性を有するポリビニルアルコールや天然物を利用した環境対応型接着剤の研究開発を行っています。

【2】難接着木材の接着性改善
木材のなかには、樹種や含有成分により接着が著しく困難な木材が存在します。そのような資源を有効に活用するため、集成材の接着に用いられる水性高分子-イソシアネート系接着剤をベースにして、難接着木材を接着できる接着剤の開発に関する研究を行っています。

各種イソシアネート化合物 pMDIと水との反応によるイソシアネート誘導体の生成

【3】接着剤・塗料の有する振動吸収・伝搬特性の解明とそれを利用した新規木質材料の開発
接着剤や塗料の違いによる木質材料の振動特性を検証した例は少なく、用いているポリマーの性質が木質材料の振動特性に与える影響は未解明です。ここでは接着剤や塗料の有する振動吸収・伝搬特性の解明を行い、振動の伝播あるいは吸収を目的とした新規木質材料を創出することを目的として研究を行っています。

振動特性評価試験

【4】未利用資源や国産針葉樹を利用した環境対応型木質材料の作製
東南アジアで栽培されている油ヤシの木質部はほとんど利用されておらず廃棄されています。この油ヤシや国産スギ、ヒノキなどの針葉樹を原料として、接着剤を用いないバインダーレス合板や樹脂含浸による性能を向上させた合板などを製造する研究を行っています。

【5】建築材料に使われる接着剤の耐久性向上
木造建築に使われている木質パネルや集成材などの木質系建築材料には、数十年の耐久性が求められます。それらに使われている接着剤の耐久性向上のための研究を行っています。