当研究室の研究テーマ

動物の生体調節機構と生活環境との関係について、研究材料として主に両生類を用いて研究しています。よく知られているように、両生類は特徴的な「変態」という段階を経て成長します。変態により幼生(オタマジャクシ)から成体へと変化する際には、その形態や機能が劇的に変わります。また、それだけでなく生活環境や生活様式も大きく変わります。

両生類の変態は内分泌学的な調節を受けていることが知られています。しかし、その調節機構について十分に解明されているとは言えず、変態の開始・進行と環境の関わりについても謎が多く残されています。

また、両生類は自ら熱を生み出すことができませんが、一部の種では周囲の水がすべて凍結するような温度の中でも生き延びることができます。逆に、周囲の水がほとんどなくなっても耐えられる種も知られています。

両生類の変態期や環境変化への順応時には、生体内でどのような調節機構がはたらいているのでしょうか。私たちはこのことを明らかにするための研究を進めています。このことにより、両生類が外部の環境の変化を感知し、体内でそれを伝達し、必要な生体変化を生じさせるという一連のメカニズムを明らかにしていきたいと考えています。

内分泌的調節機構に関する研究は、ヒトやその他の哺乳類を材料とした研究が最もよく行われています。しかし、哺乳類で知られる調節機構が必ずしも他の脊椎動物にそのまま当てはまるわけではありません。実際、当研究室では、哺乳類で知られているホルモンが両生類では全く異なる生理活性を示すことを明らかにしてきました。

脊椎動物が変温動物から恒温動物へ、水中生活から陸上生活へと進化してきた謎を解明するためには、哺乳類だけでなく他の脊椎動物を用いた研究が重要です。中でも、進化的な歴史の中ではじめて陸上に生息領域を広げた両生類は、非常に有用な実験動物であるといえます。