投稿者:長谷川 隆義(昭和46年度 理学部生物科卒)
前回の理学同窓会からほぼ1年、今年は2回目の静大同窓会東京交流会を控え、その広報を担当することになり、案内状や当日配るパンフレットの製作に追われました。
昨年の10月以降は、「重力波とニュートリノが解く宇宙の始原」(仮)という執筆依頼に沿って、資料を調べたり、取材してきました。アインシュタインの一般相対性理論からちょうど100年目の今年2月、アインシュタイン”最後の宿題”といわれた重力波(時空のさざ波)の直接検出に成功したという報道が全世界を駆け巡りました。
初期宇宙は、インフレーションという急膨張の後、ビッグバンで莫大なエネルギーが解放され、この時エネルギーが質量に転換される「対生成」で物質と反物質が同量でき、すべての素粒子が生まれたとされています。けれども膨張により宇宙の温度が低下するに伴い、対生成が起こりにくくなり、かわって「対消滅」が優勢となり、物質と反物質は等しい量のままエネルギーとなって跡形もなく消えてしまうはずです。ところが、なぜか反物質は消え去り、わずかに残った物質がこの宇宙を作り上げていったとされています。
このような初期宇宙の解明には、宇宙開闢直後(10のマイナス43乗秒後)に放たれた重力波の直接検出、その2秒後のニュートリノからの情報が鍵となってきます。初期宇宙の「消えた反物質の謎」を巡って、取材は始まったばかりです。