当研究室について

静岡大学農学部附属地域フィールド科学教育研究センター
森林生態系部門 天竜フィールド 森林遺伝育種学研究室

静岡大学農学部のフィールド(演習林)に研究室を構え、樹木の遺伝育種学研究を行っています。

私たちの身の回りには、たくさんの樹木があることは、皆さんが実感しておられるでしょう。一方で、
・一つの樹種の個体間にも、いろいろな遺伝的な違い、個性があることを意識したことはあるでしょうか?
・樹木にも、たくさんの「品種」があることはご存知だったでしょうか?

例えば、下の写真をみてください。
左は、エゾマツという樹種の写真で、1つの列に、接ぎ木で増殖されたクローンが植栽されています。
ほぼ同様の環境で、同時期に植栽されたにも関わらず、成長量がクローン間では異なっており、一方で、クローン内では非常に変動が小さいことがわかります。右の写真は、10月頃に撮影したヤチダモという樹種で、こちらも同様に、一つの列に一つのクローンが植栽されています。葉のフェノロジー(季節的な変化の状況)がクローン間では大きく異なり、クローン内ではほぼ揃っていることが確認できるでしょう。
このように、クローンや家系材料を育成・観察することで、様々な形質に遺伝的な違いがあることが理解できます。また、こういった遺伝的な違いが、人にとって利用価値に直結したり、あるいは、生育環境や気候変動への適応性に関わることもあり、これらの理解は、樹木遺伝資源の利用や保全にも役立つ知見となることが期待されます。

私たちの研究室では、樹木が持つ形質の変異や遺伝性、あるいは、遺伝子型と環境の交互作用を理解し、林業や森林管理に役立つ知見をもたらすことを目標としています。
近年は、
・育種改良を通した樹木遺伝資源の利用促進や潜在的利用価値の発掘
・遺伝資源の保全管理に資する遺伝的多様性の調査や環境×遺伝変異の交互作用の解明
・樹木の増殖や育成技術の開発
・近年のデジタル機器やAIモデルを活用した樹木の形質評価の効率化や高度化
といった研究テーマに取り組んでいます。

フィールド調査を通した形質変異の理解から、遺伝子レベルの分子生物学研究まで、幅広い視点で研究を行っています。