(1) 針葉樹高齢林の水・物質循環過程の解明
日本の森林は高齢化が進んでおり、すでに針葉樹人工林の約半数は50年生を上回っています。
高齢に差し掛かった針葉樹人工林が、今後どれほど水を利用し、炭素を吸収するかは、我々が使用できる水資源量や大気中の二酸化炭素濃度にも影響します。
私たちは、静岡大学天竜フィールドの50年生・100年生ヒノキ林内にプロットを設置し、それぞれの蒸発散量の違いについて調査しています。
また、国内のデータを収集することで、高齢林の炭素吸収量の評価を行っています。
(2) 基岩中を通過する地下水流動過程の解明
森林水文学において、土壌の下に位置する基岩は、古くには水をほとんど流さないと言われてきました。
しかし、その後の研究が進むにつれ、基岩中を多くの水が流れていること、そしてそれが河川水の流量・水質にも大きな影響を及ぼすことが明らかになってきました。
私たちは、河川水の流量・水質調査や地下水調査を行うことで、基岩を通過する地下水量の定量的な評価に取り組んでいます。
(3) 斜面崩壊が土壌炭素蓄積過程に及ぼす影響の解明
土壌は大量の炭素を蓄えることが可能であり、土壌炭素の変動は大気中の二酸化炭素濃度に大きな影響を及ぼします。
斜面崩壊は、急峻な山地斜面において、大量の土壌をその場から移動させるとともに、そこに蓄えられた炭素を移動させます。
私たちは、斜面崩壊によってどれほどの土壌炭素が移動するか、そして斜面崩壊後の土壌炭素回復過程について調査しています。