第1回 イオンミリングについて

イオンミリング(LEICA社EM RES-101)は共同利用機器センターに置かれているのにあまり活用されていない装置です。使ってみるとなかなかに良い装置ですのでこれを機に使用をご検討されてはいかがでしょうか?

何をする装置?

SEMやTEM、光学顕微鏡観察を行う前処理として試料表面にArイオンを照射して試料表面を研磨する装置です。特に結晶粒や粒界を乱さないようにしながら表面研磨できるので機械研磨傷を消す最終処理としてEBSD測定には非常に有力な装置です。

使用上の特徴

Arイオンビームを試料面に対して10°以内、言い換えれば試料面に平行にして照射することで、結晶方位や組成によるエッチングレートの差に影響を受けにくくなり、試料表面の平坦化が期待できます。逆に試料面にビームを垂直に近づけることで結晶方位や組成によるエッチングレートの差を使用した凹凸強調(レリーフ処理)ができます。

対応できる試料

直径1インチの円内に収まり、厚みが5mm程度以下のサイズで10^-4 Pa程度の真空にダメージを与えない試料です。

使用例

一辺16mmのガラス基板上に金スパッタを用いて厚さ30nmのスパッタ膜を作成しました(a)。照射条件を加速電圧6.0kV,エミッション電流3mA, 照射角度5°として15分エッチングしたところ(b)のようにほぼ前面の金スパッタ膜が除去できた。

上記と同じ金スパッタ膜を加速電圧6.0kV,エミッション電流3mA, 照射角度5°として5分エッチングしたところ下図のようになり、直径約6mmの領域の金スパッタ膜が除去された。この結果から金スパッタ膜に対するエッチングレートは少なくとも5nm/minあることがわかる。

参考)

[1]「イオンミリング装置の機能紹介と応用事例」, 金子朝子, 高須久幸,  表面技術 Vol.66, No.12, 2015