第2回 金スパッタ膜

FE-SEMで高倍率観察する際には粒子が見えるので金スパッタは不向きといわれていますが、実際にやってみたらどうなるかを試してみました。

実験

金スパッタ(SC-701AT)を用いてガラス基板上に10 nm程度の厚みの金スパッタ膜を作成し、FE-SEM (JSM-6335F)およびSPM (JSPM-5200)を用いて観察しました。

 

結果

図1~3に、加速電圧を5kVに固定し、倍率を変えながら観察したガラス基板上の金スパッタ膜の二次電子像を示します。図1は1万倍で観察した二次電子像ですが、よく見ると表面がざらついて見えます。図2は5.5万倍、図3は15万倍で観察した二次電子像ですが、表面は入り組んだ網目状の構造を持っていることがわかります。

図1. 二次電子像, 加速電圧5 kV, 倍率1万倍

図2. 二次電子像, 加速電圧5 kV, 倍率5.5万倍

図3. 二次電子像, 加速電圧5 kV, 倍率15万倍

FE-SEMではこのようにみえる金スパッタ膜を原子間力顕微鏡(AFM)でも観察してみました(図4)。この像からも網目状の構造が確認できました。さらにそのコントラストが高い網の部分は無数の粒子が連なっているように見え、FE-SEMでは明確に確認できませんでしたが網の上には孤立した粒子が観察できます。これらから、網目状の構造はスパッタによって生じたターゲットの粒子がつながってできていると考えられます。

図4. AFM(タッピングモード)像、視野300 nm x 300 nm

まとめ

金スパッタを使用してコーティングした場合、FE-SEMでは1万倍くらいからスパッタ膜の構造が見えてくる可能性が十分にあることがわかりました。