加藤研究室では、ポリオキソメタレートの分子構造を精密設計することで、貴金属サイトを超強度化・高機能化し、究極の環境調和型触媒材料を創製します。
ポリオキソメタレートとは?
ポリオキソメタレートは、古くから分子性の金属酸化物クラスターとして知られており、酸基が縮合して生成した高分子量のオキソ酸です。強い酸性質と酸化力の両方を有しており、熱的安定性にも優れているため、様々な分野で(特に触媒材料として)利用されています。ポリオキソメタレートの分子構造は非常に複雑なので、下記のような多面体モデルの表記法がよく使われています。
ポリオキソメタレートの分子設計
加藤研究室では、ポリオキソアニオンの骨格構造の一部を位置選択的に欠損させ、その欠損部位に様々な金属イオンや有機金属種を導入することで、従来のポリオキソメタレートには見られない新たな物性・機能を示す化合物の合成に取り組んでいます。
加藤研究室で開発したポリオキソメタレートの例
〔1〕軽金属元素配位ポリオキソメタレート
アルミニウムイオンまたはマグネシウムイオンを多様な欠損構造内に導入することで、均一かつ安定な単核・多核アルミニウムまたはマグネシウムサイトを構築することが可能です。得られた化合物は、水中でのアルコールの酸素酸化に対して優れた触媒活性を示すことや、分子担体として利用することで、ポリオキソメタレート表面に様々な有機金属種(例えばジルコノセン誘導体等)を担持させることも可能です。この担持型ポリオキソメタレートを固体酸塩基触媒として用いることで、不均一系での脂肪酸のエステル化やメーヤワイン-ポンドルフ-バーレイ還元に対して優れた触媒機能を発現することも最近明らかにしています。
〔2〕貴金属元素配位ポリオキソメタレート
白金、パラジウム、レニウム等の貴金属元素を含む化学種を欠損構造内に導入したポリオキソメタレートの開発も進めています。得られた化合物は、可視光照射下での水からの水素製造に対して優れた触媒活性を示します。
高温焼成により形成する白金ナノ粒子は光触媒反応後も数ナノオーダーを維持しています。
研究の方向性
現在は、貴金属種配位ポリオキソメタレートの開発と様々な触媒反応系への応用を中心に研究を進めています。