Madhabiさんたちの「蛍光ラベルされていない細胞透過ペプチド・トランスポータン10の単一ベシクル内腔への侵入の検出」の論文が、アメリカ化学会 の Biochemistry に掲載されました (Biochemistry, 59, 1780-1790, 2020 ) [Abstract]。今まで、細胞透過ペプチド (CPP) の細胞内への侵入や単一巨大リポソーム (GUV) の内腔への侵入の検出には、蛍光ラベルされたCPPが使用されてきました。この論文では、蛍光ラベルされていない(ラベルフリーの)CPPの単一GUV内腔への侵入を検出する新しい方法を開発しました。この方法では、GUVはその内腔に高濃度の蛍光プローブ・カルセイン (自己消光により蛍光強度は小さい)を含むLUV を含んでおり、もしCPPがGUV内腔に侵入してLUVの膜にポアを形成すれば、カルセインがGUV内腔に拡散して蛍光強度が増大します。そのため、LUVの脂質膜組成はGUVのそれとは異なっており、CPPが膜中にポア形成をしやすいものを選んでいます。その方法を用いて、トランスポータン10 (TP10)とGUV(蛍光プローブAF647と上記のカルセインを含むLUVをその内腔に含む)の相互作用を共焦点レーザー顕微鏡を用いて研究しました。TP10との相互作用が進むにつれて、GUV内部のカルセインの蛍光強度は時間とともに増大したが、AF647の蛍光強度は変化しなかった。この結果は、ラベルフリーのCPP(TP10)が膜にポアを形成せずに、GUV内腔に侵入したことを示しています。