山崎研究室では、生体膜、蛋白質や細胞などの生体分子集団の構造・機能・ダイナミクスの新しいイメージング法の開発とそれを駆使した生体分子集団のダイナミクスの素過程の解明により、生体系を支配する物理法則や設計原理を明らかにする研究を行っている。
(1) 単一巨大リポソーム法(単一GUV法)の開発とそれを用いた生体膜の機能やダイナミクスの研究
ペプチド/タンパク質などの外来分子と生体膜の相互作用や生体膜のダイナミクスの解明のために、直径10 μm以上の生体膜1枚からなる巨大リポソーム(GUV)を用いた「単一GUV法」を開発してきた。単一GUV法では、生体膜の機能やダイナミクスのイメージングを行い、統計的な解析よりそれらの素過程の速定数を求めることができるので、それを用いて生体膜の機能やダイナミクスの素過程やメカニズムを解明する研究を行っている。
(2) 抗菌ペプチド (AMP)、細胞透過ペプチド (CPP)、ポア形成毒素蛋白質 (PFT) の研究
単一GUV法を用いて、抗菌ペプチド、抗菌物質やポア形成毒素タンパク質による生体膜/脂質膜中のポア形成や、細胞透過ペプチドなどの生体膜/脂質膜透過の研究を行っている。また同時に、これらの物質と細菌や細胞との相互作用の研究も行っている。
(3) 種々の外的要因で誘起される膜の張力が生体膜の機能やダイナミクスに与える効果の研究
外力や浸透圧により誘起される生体膜の張力は生体膜の機能や物性に大きな影響を与える。特に膜の張力が誘起する膜中のポア形成や膜透過へ効果を研究している。
(4) 生体膜のキュービック相の安定性と構造変化のダイナミクスの研究
生体膜のナノメータースケールの構造変化や相転移を明らかにする研究も行っている。特に、膜が3次元的につながり規則的な構造を形成するキュービック相は、膜の相転移的だけではなく、膜のダイナミクスを解明するうえでも重要である。生体膜のキュービック相と液晶相間の相転移が静電相互作用で起こる ことを発見し、そのメカニズム等を研究している。