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2023年度のできごと

New: 2024/02/29 卒業研究発表会

理学部化学科の卒業研究発表会が開催されました。当研究室からは、光川瑛悠、西村はるか、小圷慎太郎の3名がそれぞれ「振動強結合における共振器制御のシミュレーションによる検討」「赤外分光による2,5-ジメチルピロール-水クラスターの構造解明」「赤外分光による2,5-ジメチルピロール-酸化プロピレンクラスターの構造解明」の題目で発表を行いました。前日の発表練習まで3名ともその出来栄えは散々たるもので、本番の発表も中途半端なまま終わってしまうのではないかと不安と諦めが混じった感情で当日を迎えました。ところが、発表前日にM1の3名(小柳出、早野、古川)により熱烈指導をしてくれていたたおかげで、本番での3名の発表はほぼ完璧で自信に満ちたものでした。わずか1日でこれだけ成長できることを目の当たりにして、若者のもつポテンシャルの奥深さに驚かされ、そして感動しました。彼ら3人にとっても、この成功体験は今後の人生を助けてくれるものと思います。

 

New: 2024/02/29 科学研究費補助金の採択

科学研究費補助金基盤(B)「赤外分光と共振器QED理論による気相分子集団の振動強結合状態の解明」が採択されました.本課題は,放送大学の安池智一教授に分担研究者として参画していただきます.

 

2024/02/14 修士論文審査会

大学院総合科学技術研究科理学専攻化学コースの修士論文審査会(2023年度3月修了)が開催されました。当研究室からは山田千乃が”赤外分光法によるピロール-テトラヒドロフラン溶媒和クラスターの構造解明”の論文題目で発表を行いました。昨年11月に学会発表を行った内容に序論や研究手法を加えたプレゼンテーションということもあり、比較的安定感のある発表をすることができたように思います。この修士論文を執筆する過程で、「微視的な溶媒和を一分子ごとの配位ではなく”溶媒二量体の配位における構造変化”として捉える」というこれまで発想したことの無い考え方が浮かび上がり、これは原著論文としても面白くなるぞと議論しながら楽しくなってきたのが大変感慨深いです。

 

2023/11/30 OB来訪

当研究室OBの石原優佑氏(2023年3月修士修了)が研究室を訪問してくださ李、現在勤務されたいる三菱ケミカル株式会社にまつわる企業勉強会セミナーを開催しました。当研究室のみならず他研究室の学生さんにもご参加いただき、活発な意見交換がなされました。当研究室を巣立ってわずか半年あまりですが、そんな短期間でも立派な社会人となってくれたなーと感慨深いものがありました。

 

2023/11/11 論文掲載

Visualization of the sequence of changes in the full wavenumber range by two-dimensional correlation spectroscopy“という表題の論文が、Chemical Physics Letters誌に受理されました。この研究は、東北大学大学院薬学研究科の中林孝和教授(責任著者)、東北大学大学院理学研究科の盛田伸一准教授との共同研究によるものです。スペクトル解析の手法として著名な二次元相関分光法に「個数スペクトル」という新規概念を適用することで、強度変調されたスペクトルの出現順をフィッティング無しで可視化することに成功しました。私たちが本研究のために提供したのは超音速ジェット中に生成するピロールクラスターのNH伸縮振動領域の赤外スペクトルであり、気相分子クラスターの赤外スペクトル解析にも本研究の個数スペクトルが有用であることを示すことに貢献いたしました。

 

2023/11/11-12 第54回中部化学関係学協会支部連合秋季大会

第54回中部化学関係学協会支部連合秋季大会が三重大学工学部(津市)で開催されました。当研究室からは、山田千乃(M2)が「赤外分光によるピロール-テトラヒドロフランクラスターの特異的溶媒和の構造解明」という表題で口頭発表を行いました。山田さんにとって人生初の学会発表でしたが、何度も繰り返した練習の甲斐あって実にスムーズに講演することができました。これまで当研究室では、ピロールを溶質分子とした種々の溶媒和クラスターを研究対象にしてきましたが、実はエーテルを溶媒分子として用いた研究はこれが初めてです。当初は、仮説を覆すような変な結果は出てこないだろうと思っていましたが、実験を進め計算を進めていくうちに「???」なことがどんどん出てきて楽しいことになっています。テトラヒドロフランは化学において極めて汎用的な溶媒ですので、私たちの研究成果が他の化学分野に影響を及ぼせるよう、早く論文にして公開したいと思います。

 

2023/11/10 NAIST訪問

振動強結合の研究で日本のトップを走るお一人である香月浩之教授と研究討議をさせてもらうために、奈良先端科学技術大学院大学(奈良県生駒市、通称NAIST)を訪問しました。今回は松本だけでなく、振動強結合の研究プロジェクトに携わっているM1の小柳出くんと古川くんも同行しました。始めに松本より、振動ポラリトン状態にある気相分子またはクラスターのラビ分裂の観測および赤外分光の観測についての研究計画をプレゼンし、その妥当性あるいは問題点などをご指摘いただきながら議論を行いました。続いて、香月研究室の見学をさせていただき、特に振動強結合を観測するための共振器を詳細に解説していただきました。その設計哲学の思慮深さに我々3人圧倒されました。見学に引き続き、香月先生が執筆された論文について小柳出と古川両氏より幾つか質問する機会をいただき、それに基づいて再度議論が盛り上がりました。最後に、今後お互いに強結合研究分野を盛り上げていきましょうと約束をしてNAISTを後にしました。これまで振動強結合の研究を進めるにあたっては、論文から得られる情報のみが私たちの判断基準だったこともあり、「本当に自分たちは正しい道を進めているのだろうか?」と半ば自己流で進めてきたことに対して疑心暗鬼になっていたのが正直なところです。今回、すでに実績を上げている香月先生とお話をする中で、自分たちの研究方針に対して自信をもってよいことを再確認することができました。大変有意義な時間を作っていただきましたことを、香月先生およびご一緒いただいた学生の皆様に、この場を借りて感謝を申し上げます。

 

2023/10/16-20 6th International Symposium of JSPS Core-to-Core program

2021年度より、JSPSの形成拠点研究事業(いわゆるCore-to-Core program)の「Molecular recognition mechanism between flexible molecules(日本側コーディネーターは東京工業大学の藤井正明教授)」のメンバーに入れていただいております。この事業の国際シンポジウムがベルリン工科大学で開催され、口頭発表の機会をいただきました。表題は「Hydration switching on the intermolecular orientation of pyrrole dimer cations probed by IR photodissociation spectroscopy」で、ベルリン工科大学のOtto Dopfer教授との共同研究の成果を報告しました。また、今回のベルリン訪問は松本だけでなく、M1の小柳出くん、早野くん、古川くんの3名も同行して、海外での研究活動を実体験することとなりました。早野くんが「Hydrogen bonding structures of propargyl alcohol clusters probed by IR cavity ringdown spectroscopy」の表題でポスター発表をしただけでなく、Fritz-Haber研究所(あのハーバー-ボッシュ法で有名なハーバーの名前を冠した物理化学に特化した研究所)の見学ツアーおよびベルリン工科大学の研究室ツアーに参加して、世界トップレベルの研究環境を目の当たりにする貴重な経験をしました。特に、赤外自由電子レーザーの大型装置を実際に見ることができたのはかなり稀有な体験であり、ツアー参加者全員が圧倒されて声も出ないという状況でした。全日程を終えた最終日の晩は、地元で人気のドイツ料理レストラン「Dicke Wirten」にて舌鼓を打ちました。

参加者集合。改めて、大先生方を前にしてよく講演できたな…と。

Fritz-Haber研究所の赤外自由電子レーザー施設。そしてベルリン工科大学での研究室見学を楽しむM1の3人組。

ドイツ料理の名店「Dicke Wirten」でベルリン最終日の晩餐。

 

2023/09/12-15 第17回分子科学討論会

第17回分子科学討論会が大阪大学豊中キャンパスで開催されました。当研究室からは、Reza Aulia(M2, ABP student)が”Structural analysis of alcohol-alkylsilane dihydrogen-bonded clusters probed by IR cavity ringdown spectroscopy”という表題でポスター発表を行いました。Rezaにとっては日本での最初で最後の学会発表の場でしたが、さすが修士論文の審査も難なくクリアしただけに、緊張することなく落ち着いて発表することができたようです。この研究は、分子クラスターの二水素結合の謎(結合の方向性や他の相互作用との競合など)を解き明かす興味深いものではあるものの、研究成果を研ぎ澄ますにはもう少し実験データを積み重ねる必要があります。1日も早く、論文にして公開したいと思います。

 

2023/09/08 Prof. Naresh Patwariによるオープンセミナー

ASCに招待されて来日したG. Naresh Patwari教授が当研究室に立ち寄ってくれ、”Glimpse of Roaming Radical Reactions”という表題でセミナーをしてくれました。Nareshは、私が東北大学でD3の大学院生をしていたときにポスドクとしてインドからやってきて以来の同い年の親友です。当時からキレキレの才能の持ち主でしたが、ボンベイに戻ってPIとなってからの研究アクティビティは凄まじいものがありました。今回はローミングの話題に終始しましたが、聞けば学生の数だけバラエティに富んだ研究テーマがあるようで、その旺盛な好奇心に舌を巻くほどです。「たまにはインドに招待してよ」と半分冗談で言ったら、来年の何かの集まりに招待してもらうことになりました。今からインド料理に舌鼓を打つのが楽しみであります。

 

2023/09/04-07 8th Asian Spectroscopy Conferenceにて招待講演

8th Asian Spectroscopy Conference(新潟県十日町市ホテルベルナティオ)にて、松本が”Microscopic preference for hetero-chiral propylene oxide dimer induced by H-bond of an achiral pyrrole molecule”という表題で招待講演を行いました。今回開催されたASC、当初予定では2021年の開催が予定されていました。しかしコロナ禍による影響があった中で、延期はせずにオンラインで開催するという選択肢もあったようですが、委員長をはじめとした多くの実行委員の先生方の熱い想いが身を結び、2023年に晴れて対面形式で開催されることとなりました。そんな中で多くのアジアの研究仲間と数年ぶりに再会を果たせたときの、皆さんの満面の笑顔は忘れることができません。旧友との再会だけでなく新たな研究者交流も生まれ、自分自身の今後の研究成果を世界に知ってもらうための土台作りも更に広げることができたように思います。そして最も重要なこと、それは井口さん(広島大)、迫田くん(大阪公立大)、村松くん(広島大)と私の4名で、同室で過ごした4日間でしょうか。普段から気心知れた皆さんとあーでもないこーでもないと硬軟織り交ぜた会話のおかげで、全くストレスなく楽しむことができたように思います。2年後の次回ASCはインドのゴアで開催されます。実行委員長は我が親友のG. Naresh Patwari(IIT Mumbai)ですので、精一杯応援しようと思います。

 

2023/08/09 修士論文審査会

大学院総合科学技術研究科理学専攻化学コースの修士論文審査会(2023年度9月修了)が開催されました。当研究室からはReza Auliaが”Structural  analysis of alcohol-alkylsilane dihydrogen-bonded clusters probed by IR cavity ringdown spectroscopy”の論文題目で発表を行いました。もともとプレゼンテーションの技術に長けていたRezaでしたので、指導教員としても特に心配することなく発表を見届けることができました。思い出すこと2年前、ABP学生として大学院に入学したRezaでしたが、2021年10月に来日予定だったのがCovid-19により母国インドネシアにて足止めされ、来日できたのはその半年後である2022年4月でした。それまでの半年間はZoomで定期的に輪読をするなどの時間を過ごしてきましたが、実質的には1年半で修士論文のための研究をしたことになります。修士論文にまとめた研究内容は、この短期間で行ったものとしては十分すぎるものだったように思います。これも、本人の志の高さによるものだったと思います。Rezaの未来に幸あれ。

 

2023/07/04 論文受理

IR cavity ringdown spectroscopy and density functional theory calculations of pyrrole – diethyl ketone clusters: Impacts of carbon-chain flexibility on the diversity of N-H…O=C hydrogen bond“という表題の論文が、Physical Chemistry Chemical Physics誌に受理されました。前任地(兵庫県立大学)の本間健二先生の研究室で助教をやっていたときの最後の仕事を、やっとのことでことで公開することができました。水素結合の中でも特に生体系で重要な役割を果たす「N-H…O=C型水素結合」の微視的な構造を研究したいということで、NH基をもつピロールと様々なケトン類(アセトンやシクロペンタノン)とのクラスターを対象としてきました。本論文ではその第3弾ということで、ジエチルケトンをC=O基の担い手として適用しました。この分子の面白い点は、二つのエチル基が配向自由度が高いことであり、その柔軟性が水素結合構造の多様性を如実に引き出すことです。この「柔軟性と多様性」の相関が、生体分子の機能を解き明かす何らかのヒントになればいいなあと、微かにですが期待しています。

 

2023/06/30 九州大学理学部化学科を訪問

九州大学医学部百年講堂で開催された物質・デバイス共同研究賞授賞式の翌日、九州大学伊都キャンパスにある理学研究院化学部門の寺嵜亨教授の研究室を訪問しました。金属クラスターイオンの光電子画像観測のための最新鋭の実験装置を見学させていただきました。また、隣接する恩田健教授の研究室にもご案内していただき、超高速レーザー分光のための見事な実験装置を見学させていただき、九州大学の研究アクティビティの高さに舌を巻きました。そしてこの日は偶然、東京大学の佃達哉先生が集中講義にいらしており、午後から公開のセミナーをされるとのことでありがたく聴講させていただくことになりました。クラスター科学の世界最先端の話題に圧倒された2時間でした。その後の夕方、寺嵜先生と奥様、佃先生そして私の4名で博多で一杯できたのはとても楽しい思い出です。

 

2023/06/29 第5回物質・デバイス共同研究賞(基盤共同研究)の受賞

松本准教授が、第5回物質・デバイス領域共同研究賞を受賞しました。令和4年度に物質・デバイス領域共同研究拠点より採択された基盤共同研究(「芳香族電荷共鳴錯体の赤外分光(共同研究者は東京工業大学化生研の藤井正明教授)」)での成果が認められたものです。藤井先生のみならず、共に共同研究を進めていただいたベルリン工科大学のOtto Dopfer教授、快適な共同研究の場を提供していただいた藤井研究室秘書の河内さん、そして本基盤共同研究の運営などにご尽力いただいた東工大化生研事務室の管さんには、大変おせわになりました。この場を借りて御礼申し上げます。

 

2023/06/07 鈴木研究室同窓会@福岡

鈴木俊法先生の研究室の元スタッフおよび元弟子が化学反応討論会に参加することを受けて、同窓会が開催されました。会場は、実行委員長の堀尾さんオススメの「ごはんや飯すけ」(お魚とお酒が抜群に美味い)。今回のメイン行事は、広島大学の高口博志先生の教授昇進のお祝いで、鈴木先生の嬉しそうな表情がなんとも印象的でした。

 

2023/06/07-09 第38回化学反応討論会

九州大学西新プラザで開催された第38回化学反応討論会に参加しました。今回、自分の講演はありませんでしたが、ポスドク時代の上司である鈴木俊法先生(京大院理)のご講演の座長という史上最高レベルの重要業務を仰せつかりました。質疑応答などに失礼があってはならぬと、講演内容にまつわる論文を予習して座長に臨んだ甲斐もあり、そして聴衆からの活発な議論もあったおかげで、大変高水準なセッションとなりました。討論会全体を見渡しても、実行委員長の堀尾琢也先生(九大院理)の朗らかな人柄をそのまま鏡写しにしたような、和やかな雰囲気が漂った楽しい三日間でした。

 

2023/05/21-06/04 ベルリン工科大学にて共同研究(日常編)

5月のベルリンは、夏至の時期が近く緯度が高いこともあり、朝から晩までの長い1日(夕焼けを夜10時に見ることができる)を市民の皆さんが全力で謳歌している様子を伺えました。そして5月は、いちごとホワイトアスパラガス(シュパーゲル)を楽しむ季節でもあるそうです。街中の通りにはいちごのスタンドが数多く立ち並び、レストランに入れば多くのお客さんがシュパーゲルを楽しんでいました。私もベルリン市民に倣って旬のシュパーゲルをいただきましたが、こんな美味いホワイトアスパラ食べたことないと感動しっぱなしでした。ベルリンを旅行するならば5月が絶対にお薦めです。

シュパーゲル、長さは30 cmくらい。こんなでっかいやつ日本では見たことない。そして快晴の休日、公園のベンチで何も考えずに飲むビールと合わせるイチゴのなんと美味しいことよ。

 

2023/05/21-06/04 ベルリン工科大学にて共同研究

JSPS二国間交流事業の共同研究を目的として、ベルリン工科大学のOtto Dopfer教授の研究室を訪問しました。前回の共同研究から5ヶ月ぶりの訪問です。今回のミッションは「電荷共鳴ピロール2量体カチオンの微視的水和構造」について論文を執筆することでした。”Team Pyrrole”の3名(Otto、私、大学院生のArildii Dashjargalさん)で多くの議論を重ね、必要に応じて実験データを取得し、スペクトル解析のために量子化学計算を行いました。惜しくも2週間の滞在で執筆を完了させるところまでは至りませんでしたが、作業を進める中で新たな研究対象が見つかるなど実りの多い共同研究となりました。

 

2023/04/27 サイエンスカフェin静岡にて講演

B-nest静岡市産学交流センターで開講されたサイエンスカフェin静岡にて、「共振器分子科学へのいざない〜分子を鏡で挟んでみたら〜」という演題で講演をいたしました。当日は、会場にお越しいただいた方々とオンラインでご参加された方々が合計で93名もいらしたとのことでした。特に会場には多くの中高校生の皆さんがいらしてくれて、休憩中や講演後に大変多くの質問をしてくれました。将来を担う若い方々がサイエンスに興味をもってくれる様子を目にすると、こういうアウトリーチ活動の重要性を改めて認識します。

 

2023/04/03 共同研究課題の採択

2023年度 物質・デバイス領域共同研究拠点の基盤共同研究として、「芳香族電荷共鳴錯体の赤外分光(受入教員:東京工業大学化学生命科学研究所 藤井正明教授)」が採択されました。昨年に引き続き、ピロール2量体カチオンを中心とした溶媒和クラスターの赤外分光研究を進めてまいります。

 

2023/04/03 新年度の研究室始動

総勢11名のメンバーが集合して新年度の研究室活動を開始しました。

 

 

2022年度のできごと

2021年度のできごと