卒業生からのメッセージ

所属・職は寄稿当時のものです。

科捜研・久龍小春の鑑定ファイル 小さな数学者と秘密の鍵 新藤 元気

静岡大学 理学部物理学科 卒業
筑波大学 大学院数理物質科学研究科物理学専攻 修了
岐阜県警刑事部科学捜査研究所入所

大学、大学院での専攻は半導体光物性です。研究を続けたい気持ちはあったものの、何も考えずに博士課程に進学できるほど経済的に余裕があったわけでもありませんでした。そんなとき、科学捜査研究所――いわゆる科捜研の研究員は警察職員として勤務しながら社会人枠で博士課程に進学することができるということを知り、ドラマみたいなユニークな職業へのあこがれもあって、それを目指すことにしました。
運よく内定を貰ったものの一身上の都合により3年程度で科捜研を辞めざるを得なくなり、今は半導体メーカーに勤めています。社会人枠で博士課程へ進むという希望が叶わず、しばらく意気消沈していたのですが、この経験を何かに活かしたいと考え、科捜研を題材にした小説を書き始めました。
かくして、第22回このミステリーがすごい!大賞の隠し玉として「科捜研・久龍小春の鑑定ファイル 小さな数学者と秘密の鍵」を出版。現在はエンジニアとして勤務しながら、小説を書いています。
理系なのに小説?と言われることが多いのですが、扱っている題材がサイエンスということもあり、研究で培った力や経験が多分に活かされていると感じています。自分のように小説を書く必要は全くないのですが、大学で学んだことは将来必ず役に立つと思いますので、思いきり自分の好きな分野を学んでみてください。

Tsuzuku 都竹 華代

2016年 静岡大学 理学部物理学科 卒業
2018年 名古屋大学 大学院理学研究科 物質理学専攻(物理系) 博士前期課程 修了
株式会社河合楽器製作所 Shigeru Kawaiピアノ研究所

本質を知り、その美しさにときめく

私は大学のゼミでは量子力学の数学的基礎を、大学院では光合成初期過程の反応について理論的な研究をしてきました。現在は大好きなピアノの開発や基礎研究に携わっています。物理学科では物理学の楽しさを学べるだけではなく、物事の本質を探ろうとする姿勢、数学的な思考力、応用力、プレゼンテーション能力等が自然と鍛えられました。 入社以降、木材・音響などの異分野に飛び込んで学ぶ毎日ですが、学生時代学んだことと変わらない好奇心が、私の技術者としての土台になっています。ぜひ自分の”好き”に没頭して学んでください。

Yata 矢田 雅哉
2008年3月物理学科卒業,2010年3月理学研究科物理学専攻修了
韓国 Institute for Basic Science 研究員

私は静岡大学理学部を卒業後に修士号も静岡大学で習得しました。その後は博士号をKEKで取得して以後研究者として生活しており、現在は海外の研究所で素粒子物理学の研究をしています。専門は理論物理学のうちの超弦理論と呼ばれる分野で、素粒子を1次元のひもの振動と捉えて世界の構築を探ることをします。素粒子という小さな世界だけでなく宇宙や次元の成り立ちなどにも深く関係しており、とてもエキサイティングな研究分野だと感じています。学部4年生の時に素粒子物理学の研究室で、素粒子物理学の基礎となる場の理論や現在の専門である超弦理論を学びました。静岡大学は他の大学に比べて少しのんびりしているところがありますが、その分自分が納得できるまで1つの事を学ぶことができる時間があると思います。自分のペースで勉強がしたい人、周りを気にせずに何かに没頭したい人には静岡大学はうってつけです。

 

Itou 伊藤 哲
1998年3月物理学科卒業,2000年3月大学院博士前期課程物理学専攻修了
2003年3月大学院博士後期課程物質科学専攻修了
静岡大学電子工学研究所ナノビジョン研究部門准教授

現在は出身地浜松にある母校の静岡大学浜松キャンパスで研究に取り組んでいます.静岡大の理学部を卒業後,企業の研究所,私立大学,静岡大工学部と複数の研究機関を渡り歩いたおかげで,それぞれの特徴が良く見えてきたと思います.静岡大学理学部は本当に好きなことが,他の束縛を受けることなく自由に行えるところだと思います.理学部以外にも大学には色々な人たちがいると思います.様々な考えを持つ人たちとのふれあいも楽しみつつ,物理学科で学問に没頭できる喜びを味わってみてください.

 

Ejiri 江尻 省
1997年3月物理学科卒業
情報システム研究機構 国立極地研究所助教

静岡大学では色々な出会いがありましたが、現在の私の専門である「超高層大気科学」と出会ったのも静岡大学でした。4回生で受講した集中講義の一つがこれだったのですが、講義の中で紹介された南極観測風景は衝撃的で、自然と相対するというのは、なんと過酷で魅惑的なものか、と非常に感銘を受けたことを覚えています。今私は、この南極観測事業に従事しています。極域の超高層大気、特に上空 100 km 付近の地球と宇宙の境目で引き起こされる様々な自然現象の観測を通して、地球と宇宙のエネルギーや物質の交換・輸送を研究するべく、レーザーレーダー(Lidar)を開発中で、近い将来、これを昭和基地に設置して越冬観測を行う予定です。地球上だけでなく宇宙にだって、行けない時代ではありません。行ってやりたいことがあるなら、本気で目指してみてもいいんじゃないでしょうか?

 

Tezuka 手塚 功司
2004年3月物理学科卒業、2006年3月大学院博士前期課程物理学専攻修了
ローム浜松㈱

私は大学院卒業後、半導体デバイスメーカーに就職しました。現在、プロセスエンジニアとして日々を送っています。半導体デバイスは動作速度を上げるため、最小GATE寸法をより短くGATE酸化膜をより薄くする等の微細化が日進月歩している中で如何に生産ラインの工程を安定させ品質向上させるか、という事がプロセスエンジニアのテーマとなります。 私は大学院で希土類化合物(強相関電子系の物理)の研究に取り組んでいましたが、工学色の強い馴染みの無かった分野で仕事に従事できているのは研究活動を通して得た知識・経験、特にその考え方を学んだ事が大きいと考えます。すなわち問題点を見いだし、メカニズムを想定し、実験によって検証する。そして結果を考察し対策を打つ、あるいは次の問題点を見つける。どの分野にでも共通する考え方だと思います。静岡大学で学べて良かったです。

 

Syouji 生子 貴之
2005年3月物理学科卒業,2007年3月大学院博士前期課程物理学専攻修了
関西航空地方気象台・広島空港出張所

高気圧に覆われて穏やかな晴れた日に空を見ると、ぽつんと綿菓子のような白い雲が漂っています。その雲は時々灰色を呈しているときがあります。なぜだろう。自然には、少し気にして見ると、そんな素朴な疑問がたくさん潜んでいます。私は大学院を卒業後、気象庁に就職しました。就職当初は気象の事についてほとんど無知でした。けれども仕事では、大学で学んだ物理学の知識(力学、熱力学、数学、電磁気学など)を活かせる場面が多々ありました。なぜなら気象学には、物理学と共通している部分が多くあったためです。しかし、大学で学んできた事でもっとも有効な事は、知識ではありません。疑問から答えにつなぐ、簡潔なプロセスを構築するスキルです。これはどのような職業においても、知恵という形で役に立つと思います。

 

Maejima 前島 康光
2003年3月物理学科卒業
名古屋大学 地球水循環研究センター 気象学研究室 研究員

日々の天気をもたらす地球大気の流れは非常に複雑なものですが、一つ一つを見ていくと実は意外な共通性が潜んでいることがあります。私はこのような流れの基本的なメカニズムを調べることによって、気象の素過程を理解することを目指しています。気象の研究にとって物理学は重要な解析ツールであり、物理的思考は混沌とした地球大気に一筋の道を開いてくれます。静岡大学で学んだ物理学は大きな力となって私の研究を後押ししてくれています。