なにを研究するか?研究テーマをどう選ぶのか?

独立した研究者は、自分がなにを研究するか?を決めることができる。その一点だけで、わがままで自分勝手な私は研究者になることを望んだんだろう。そのため、研究テーマをどのように選ぶのかというのは、学部4回生で卒論のための課題研究をした頃から、最大の問題であり続けた。大学院生になってからもこの話題は最大の関心事の一つであった。深夜1時、2時まで居酒屋で話をしたこともあった。

どうしてこのことを思い出したかというと、学部3年生が研究室訪問に来たときに、言われた次の質問がきっかけである。「ホームページの研究プロフィール(地球科学科のホームページかな)と現在の研究テーマが異なるのはなぜですか?」

なるほど、私の名前の横には、「地質学 水とマグマ、海水とマントル、海水の化学組成史」と書かれている。まず、専門を地質学としたのは、「勢い」で、本当に地質学を研究している方々は顔を曇らせただろう。次の3つは関心事である。最初の項目は水とマグマで、これは私がこの歳まで30年以上研究してきた対象である。2年生の授業では、私が学んで面白かったこと、印象に残ったこと、大切とおもうことをショーケースのように紹介している。3年生になると、実験授業では、理解しておくことが必要な事項を演習し、講義では、私が研究してきたことを教えている。前者でも「微量成分元素の分配係数とヘンリーの法則」とか「火山フロントの特徴で重要なのは」とか、私が学生のときに習ってきたことを教えている。後者の授業は過去の私の研究の話で、ほかの授業では聞かないこともあるだろう。3年生後期では「地球化学」で安定同位体や炭素循環といった私が研究したことのない内容を私自身が(教えるふりをして)勉強している。話が逸れたが、つまり、簡単にいうと、長い間水とマグマの研究をしていたが、現在はマントルと二酸化炭素の反応を研究している。これは学生さんにはわかりづらいだろう。

私の研究史は下記で読める: 
https://researchmap.jp/tkawamoto/published_papers/21785555

研究のテーマは時間変化してきた。ただし、基本はマントルの水流体に興味がある。研究する対象をどこにフォーカスするかが変わる。守備範囲は広く、攻撃範囲は狭くないと得点できないからネ。実験手法は、これまで、ピストンシリンダー、マルチアンビル型高温高圧発生装置、SIMS、ダイアモンドアンビルセル、赤外顕微鏡、放射光赤外線、ラマン顕微鏡、放射光エックス線(回折、ラジオグラフィー、その後、蛍光エックス線)、流体包有物のマイクロサーモメトリー、ラマンイメージング装置、FIB、内熱式ガス圧発生装置、水熱合成装置と手を変え品を変えてきた。偏光顕微鏡と電子顕微鏡は常に使ってきたが、20年くらいで大きく進歩している。

最後に実験岩石学の神様、久城育夫先生の名言を。「実験を始めたときには、研究はほとんど終わっています」。9割と言われたんだったかもしれない。神様ならではの言葉。凡百の研究者では、そうはいかない。ただし、半分は終わっているかもしれない。それだけ、テーマを決めて、実験をデザインすることが大切なのだ。

タイトルに偽りあり。どう選ぶのか?については書いていない。なぜだろうか。いずれ続きが書けると良い。