2) 新しいスイッチ素子で構成する低電力アナログ・デジタル回路


新しいスイッチ素子と回路設計
当時フェアチャイルドに在籍し後にインテルの創業者の一人となったゴードン・ムーア博士は、集積回路誕生から数年経った
1965年に、これまでを振り返ると微細化と回路デバイス技術の発展によってチップのコストが指数関数的に下がってきていることを初めて示し、今後もしばらくはこの傾向をさえぎるものは見当たらないのでこの傾向は続くだろうことを予想した。以来、装置や材料メーカはこの2年で集積度が2倍というムーアの経験法則に従って研究開発を行い、集積回路やコンピュータメーカはこれを前提に生産計画を立てて事業を進めてくることができた。この指数関数的な製造技術の向上によって、例えば今のスマートフォンは数年前のノートパソコンの演算性能となるほどの進化を遂げてきた。しかしながら、現在14nmの半導体テクノロジーは今後、微細化だけでは演算当たりの製造コストを下げることが難しくなっていくと考えられている。いわゆる、ムーアの法則の終焉である。これから半導体業界の指針となっていくものは、これまでの微細化技術からコンピュータの演算効率そのものに移ろうとしている。つまり、コンピュータの進化を、システム統合化、異種デバイスの集積化、センサやMEMSなどの異種部品の集積化、新しい機能を持ったデバイス開発、など微細化以外の技術開発によって総合的に実現しようというものになってきている。

このような背景の下、スイッチング電力を減らすことを期待した、新しい動作原理に基づくスイッチ素子の研究が盛んになってきている。この「ムーアの法則後のスイッチ素子」を用いたアナログ・デジタル回路はどのようなものになるであろうか?回路設計を行う上でどのようなスイッチ素子の特性が大事だろうか?このような基礎的な質問への具体的な回答を探っていくことによって、集積回路工学に貢献することを目的の一としたい。


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